ロシア連邦憲法
ロシア連邦憲法
概要と歴史的背景
現行のロシア連邦憲法は、ソビエト連邦崩壊後の混乱期である1993年に、エリツィン大統領の主導で制定された。大統領に強大な権限を集中させる「スーパー・プレジデンシャル制」を採用している。
2020年の憲法改正により、プーチン大統領の長期政権を可能にするとともに、「領土の割譲禁止」「神への信仰」「結婚は男女の結合」といった、ロシアの伝統的価値観(保守主義)を明記した。
統治機構(行政・立法・司法)
- 大統領: 国家元首であり、外交・軍事・安全保障の実権を握る。議会の解散権や大統領令の発布権など、非常に強い権限を持つ。
- 連邦議会: 上院(連邦院)と下院(国家会議)の二院制。
- 主権民主主義: 欧米流の民主主義とは異なる、ロシア独自の国益と主権を重視する「主権民主主義」を掲げる。
国民の権利と義務
基本的人権を保障する一方で、国家の統一、安全保障、道徳の保護のために権利を制限することを認めている。
2020年改正では、愛国心教育や歴史的真実の擁護(対独戦勝の記憶など)が強調され、リベラリズムによる歴史修正主義(ソ連とナチスの同一視など)に対抗する姿勢を鮮明にした。
安全保障・軍事に関する規定
大統領は軍の最高司令官である。憲法改正により「ロシア連邦の領土の割譲に向けた行為およびその呼びかけ」が禁止された(第67条)。これは、北方領土問題において日本に対する強硬な姿勢を憲法レベルで固定化したことを意味する。
リアリズムの観点からの分析
ロシア憲法は、第四の理論(アレクサンドル・ドゥーギン)の影響を色濃く反映しつつある。
- ユーラシア主義: ロシアを単なる国民国家(Nation-State)ではなく、独自の「文明国家」(Civilization-State)として再定義している。
- 多極化の志向: アメリカ一極支配(ユニラテラリズム)に挑戦し、多極的な国際秩序を構築するための法的要塞として機能している。
- 核抑止力: 強力な大統領権限は、核大国としての戦略的安定性を維持するために必要不可欠とされる。
他国の憲法との比較
- 日本国憲法との比較: ロシアは憲法で領土割譲を禁じ、日本は憲法9条で領土を取り返す手段(武力)を禁じている。この非対称性が、日露交渉の停滞の根本原因である。
- 欧米諸国の憲法との比較: LGBTの権利などを推進する欧米のリベラル憲法に対し、ロシア憲法は伝統的家族観を擁護する「保守の砦」としての性格を強めている。
参考文献
- 『ロシア連邦憲法』
- 『第四の政治理論』、アレクサンドル・ドゥーギン著