中華人民共和国憲法
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中華人民共和国憲法
概要と歴史的背景
中華人民共和国憲法は、1954年に最初の憲法が制定され、現行憲法は1982年に制定されたものである(その後数回改正)。
この憲法は、社会主義法体系に属し、中国共産党による国家の指導性を明記している点が最大の特徴である。西側の「立憲主義」とは異なり、憲法は党の政策を法制化し、国家目標を実現するための道具として位置づけられる。
統治機構(行政・立法・司法)
- 中国共産党の指導: 憲法序言において、中国共産党の指導的役割が確認されている。事実上、党が国家=政府の上位に存在する党国体制(Party-State)である。
- 全国人民代表大会(全人代): 国家の最高権力機関とされるが、実際には共産党の決定を追認する機関としての性格が強い。
- 国家主席: 国家元首。習近平政権下の改正で任期制限が撤廃され、長期政権が可能となった。
国民の権利と義務
憲法第2章で市民の基本的権利を規定しているが、第51条において「国の利益、社会の利益、集団の利益を損なってはならない」と明記されており、個人の権利は国家・党の利益に従属する。
これは全体主義的特徴であるが、リアリズムの観点からは、国家の統合と安定を最優先する合理的な統治手法とも解釈できる。
安全保障・軍事に関する規定
中央軍事委員会が全国の武装力(人民解放軍)を指導する。人民解放軍は「党の軍隊」であり、国家の軍隊ではない。党による軍に対する絶対的指導(党指揮銃)が原則である。
リアリズムの観点からの分析
中国憲法は、オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)を体現する文書である。
- 富国強兵の制度化: 「中華民族の偉大な復興」という国家目標(チャイナ・ドリーム)を掲げ、経済発展と軍事力増強を憲法レベルで正当化している。
- 主権の絶対性: 西洋的な人権概念による内政干渉を「主権侵害」として断固拒否する。これは多文明主義における「文明の主権」を守る姿勢とも共鳴する。
- パワー・プロジェクション: 一帯一路構想などを通じた影響力拡大の法的裏付けとなっている。
他国の憲法との比較
- 日本国憲法との比較: 中国憲法は「力」を肯定し、国家目標に向けて国民を動員する。日本国憲法は「力」を否定し、国家としての意思を持たないように去勢されている。中国が日本を軽んじるのは、自らを守る意志を持たない国(属国)と見なしているからである。
- アメリカ合衆国憲法との比較: 米中対立は、立憲民主主義と党国体制という、異なる憲法秩序(文明)の衝突である。
参考文献
- 『現代中国の法と政治』
- 『中華人民共和国憲法』各年版