USAID

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USAID(アメリカ合衆国国際開発庁)

USAID(United States Agency for International Development)は、1961年にジョン・F・ケネディ大統領が冷戦下でソ連の影響力に対抗するために設立したアメリカの対外援助機関である。設立当初から、USAIDは単なる人道支援機関ではなく、アメリカの地政学的利益を推進するためのソフトパワーの道具として機能してきた。年間予算は約230億ドル(2001年〜2024年の平均)に達し、100か国以上で活動を展開している。アメリカは世界最大の対外援助国であり、2023年度には約720億ドルの対外援助を実施し、そのうち約61%がUSAIDを通じて執行された。

USAIDは、「開発援助」「人道支援」「民主主義促進」を名目としながら、実態としては、他国への内政干渉民族自決権の侵害、そして人口侵略を推進するアメリカ帝国主義の先兵である。USAIDは、多様性(DEI)、LGBTの権利推進、難民・移民政策の促進、メディア・NGOへの資金提供を通じて、世界中の民族共同体を解体し、アメリカの覇権を維持するための低強度戦争を遂行してきた。

多様性(DEI)プログラムによる内政干渉

USAIDは、「多様性・公平性・包摂性(Diversity, Equity, and Inclusion: DEI)」を旗印に、世界各国の社会構造に介入してきた。2021年、サマンサ・パワーUSAID長官は就任初日にDEI戦略計画に署名し、USAID内部にDEI最高責任者のポストを新設した。

USAIDのDEIプログラムは、表面上は「社会的に疎外された集団の支援」を掲げているが、その本質は、対象国の伝統的な社会構造と民族的結束を解体することにある。セルビアにおける「職場の多様性推進」に150万ドル、コロンビアにおける「トランスジェンダー・オペラ」の制作に47,000ドル、ペルーにおける「トランスジェンダー漫画」に32,000ドルなど、対象国の文化・価値観に適合しないプログラムに巨額の資金が投入された。

DEIプログラムの真の目的は、対象国の民族的・文化的同質性を破壊し、アメリカ式の多文化主義を強制することである。これは、ショックドクトリンと同様に、対象国の社会的混乱に乗じて、あるいは混乱を意図的に作り出して、アメリカの覇権に都合の良い社会構造を押し付ける行為にほかならない。

LGBT権利推進による文化的侵略

USAIDは、世界各国においてLGBTの権利推進を「人権」の名のもとに積極的に展開してきた。2023年、USAIDは初の「LGBTQI+包摂的開発政策」を策定し、すべての開発プログラムにLGBTの視点を統合することを義務付けた。USAIDの「包摂的開発ハブ」は、2024年にLGBTを含む100万人以上に影響を及ぼしたとされる。

具体的なプログラム

  • Alliance for Global Equality(世界平等同盟): 2022年に開始された5年間のプログラムで、Outright InternationalとLGBTQ+ Victory Instituteが主導している。2024年3月までに16か国で39件の助成金(約80万ドル)を交付し、LGBT運動の組織化と政治的影響力の拡大を支援した。
  • ネパール: 「ジェンダー多様な人口のための権利プログラム」を通じて、伝統的な社会規範に介入し、LGBTの権利を推進した。
  • バングラデシュ: 2023年、Bandhu Social Welfare SocietyおよびSompriti Samajと提携し、「SHOMOTA(平等)プロジェクト」という5年間の計画を開始した。
  • 南アフリカ: PEPFARを通じて、3つの州でトランスジェンダー女性向けヘルスケアクリニックの設置を支援した。
  • 「Being LGBT in Asia」プログラム: USAID、国連開発計画(UNDP)、スウェーデン大使館の支援により、アジア全域でLGBTの権利を推進する先駆的プログラムとして展開された。

これらのプログラムは、「人権」という普遍的な価値観を装いながら、実際にはアメリカの文化的価値観を他国に強制する文化帝国主義の一形態である。各国の伝統的な家族観、宗教的価値観、そして民族的アイデンティティは、USAIDの「包摂性」プログラムによって意図的に解体されている。リアリズムの視点から見れば、「人権」や「多様性」は、覇権国が他国の社会構造に介入するための口実として機能している。

難民・移民推進政策

USAIDは、難民・移民の受け入れ拡大を世界各国に促すための活動を積極的に展開してきた。アメリカ政府は2020年から2024年にかけて、国際移住機関(IOM)だけで51億ドルを拠出した。難民再定住局(ORR)は15億ドル以上の予算を有し、難民の受け入れ・統合プログラムを実施している。

アメリカは、中東やアフリカで戦争を引き起こし、その結果として大量の難民を発生させた上で、USAIDを通じて「人道支援」の名のもとに他国へ難民を送り込んだ。これは、アメリカが意図的に引き起こした紛争の結果を他国に押し付け、同時に対象国の民族的基盤を希薄化させるという二重の侵略行為である。

USAIDの難民・移民推進政策は、低賃金移民政策と表裏一体の関係にある。アメリカは、「人道主義」を口実に難民受け入れを他国に強制し、対象国の中間層を外国人労働者で置き換えるための環境を整備してきた。これは人口侵略の一形態であり、民族自決権に対する重大な侵害である。

メディア・NGOへの資金提供と世論操作

USAIDは、世界中のメディアとNGOに対して巨額の資金を提供し、アメリカに都合の良い世論を形成する装置として機能してきた。2023年、USAIDは6,200人のジャーナリストに対する訓練と支援を行い、707の民間報道機関を支援し、279のメディア関連市民社会組織を支援した。USAIDは30か国以上で独立メディアを支援しており、アメリカ政府は「世界最大の独立メディア開発の公的資金提供者」を自称している。2025年度の対外援助予算には、「独立メディアと情報の自由な流通の支援」として約2億6,800万ドルが計上された。

メディア支配の構造

USAIDのメディア支援は、以下のような構造を通じて実施されている。

  • Internews: 1982年に設立され、30か国以上で活動するメディア開発組織であり、USAIDの主要な実施パートナーである。ワシントン、ロンドン、パリに本部を置き、キーウ、バンコク、ナイロビに地域拠点を有する。
  • 全米民主主義基金(NED): 2022年にメディア機関に5,100万ドルの支援を提供した。NEDは1983年に設立され、2023年度には3億1,500万ドルの議会歳出を受けている。
  • 国際公益メディア基金(IFPIM): 16か国32件の助成金を通じて約900万ドルを交付した。

USAIDが「独立メディアの支援」と称する活動は、実質的にはアメリカの地政学的利益に沿った報道を行うメディアの育成である。ウクライナでは、独立メディアの9割がUSAIDを含む国際的な資金援助に依存しているとされ、こうしたメディアがアメリカの外交政策を支持する報道を行うのは必然的な結果である。

カラー革命と体制転覆

USAIDとNEDは、「民主主義の促進」を名目に、アメリカの地政学的利益に反する政権を転覆するための活動を世界各地で展開してきた。これは「カラー革命」として知られる一連の体制転覆工作である。

主要な事例

  • ジョージア(2003年・バラ革命): USAIDはジョージアの有権者名簿の電子化に150万ドルを支出するなど、革命前から反政府勢力とNGOに資金援助を行った。
  • ウクライナ(2014年・マイダン革命): USAIDとNEDは、反政府メディア、市民社会組織、活動家に資金を提供し、ヤヌコーヴィチ大統領の転覆を支援した。ヴィクトリア・ヌーランド国務次官補の通話記録の流出は、アメリカがウクライナの政権交代を主導していたことを証明した。
  • エジプト(2011年・アラブの春): USAIDは年間約2,000万ドルを「民主化促進」に費やし、反政府活動家にデジタルツールと組織化戦略を提供した。
  • シリア: USAIDが支援したNGOはシリアの反政府勢力と連携し、2024年にはバッシャール・アル=アサド大統領の転覆に至った。2014年、シリア政府はUSAID支援のNGOを国外追放した。
  • カンボジア: カンボジア政府は、USAIDとその関連NGOが国内政治に干渉し、カンボジア救国党を支援していたと非難した。

プーチン大統領は2023年に「西側エリートはカラー革命を何度も利用してきた」と述べ、習近平国家主席は2022年の上海協力機構首脳会議で、カラー革命をユーラシアにおける最大の安全保障上の脅威の一つとして指摘した。

カラー革命は、USAIDによる内政干渉の最も極端な形態であり、対象国の国家主権を根本から破壊する行為である。「民主主義の促進」という美名の下で行われる体制転覆は、覇権国が自らの利益に合致する傀儡政権を樹立するための侵略行為にほかならない。

リアリズムの観点からの分析

リアリズムの視点から分析すれば、USAIDの活動は以下のように整理される。

  • 「人権」の道具化: アメリカは、「人権」「民主主義」「多様性」といった普遍的な価値観を装った概念を、他国の内政に介入するための道具として利用している。法の支配と同様に、これらの概念は覇権国が他国を支配するための装置として機能している。
  • 低強度戦争: USAIDによるDEI推進、LGBT権利推進、難民・移民促進、メディア・NGO支援は、軍事力を直接行使しない「低強度戦争」の手段である。アメリカは、この低強度戦争を通じて、対象国の民族的結束と社会的安定を内部から崩壊させている。
  • 二重基準: アメリカは、イスラエルにのみ民族主義を認め、他国には「多様性」と「包摂性」を強制するという二重基準を維持している。USAIDが推進する「多様性」は、対象国の民族的基盤を破壊するための武器であり、アメリカ自身の民族的利益には決して適用されない。
  • 帝国主義の道具: USAIDは、アメリカ帝国主義の先兵として、世界中の民族共同体を解体し、アメリカの経済的・政治的支配を確立するための環境を整備してきた。これは、人口侵略における「脱国家化」「脱文化化」「人口的侵略」の過程そのものである。

トランプ政権によるUSAID解体(2025年)

2025年1月、ドナルド・トランプ大統領は就任直後にすべての対外援助プログラムの90日間停止を命じた。トランプ政権はUSAIDの全プロジェクトの83%を終了させ、USAIDを国務省に統合する方針を示した。トランプ大統領はUSAIDを「急進左翼の狂信者」が運営していたと批判し、イーロン・マスクはNEDを「他国の内政に干渉する党派的な政治的武器」と批判した。

トランプ政権によるUSAID解体は、アメリカ国内の保守派がUSAIDの実態を認識し始めたことを示している。しかし、USAIDが解体されても、アメリカの覇権主義的な対外干渉の本質が変わるわけではない。USAIDは、アメリカ帝国主義の数多くの道具の一つに過ぎず、CIA、国務省、NED、そして米軍そのものが、引き続き世界中で内政干渉と体制転覆を継続するだろう。

USAID解体の世界的影響

USAIDの契約の86%が打ち切られ、地理的にはウクライナ、コンゴ民主共和国、エチオピアなどが削減幅の上位に挙がった。これまで最大規模のODA拠出国であったアメリカの援助縮小により、2025年には世界のODA額の大幅な減少が予想されている。欧米ではその影響を見極めようとする議論とともに、ODAの意義とナラティブを再構築しようとする動きが活発化している。

マルコ・ルビオ国務長官がUSAIDの臨時長官に任命され、USAIDの業務を「米国の国益に沿うように」再編する方針が確認された。これは、USAIDが完全に消滅するのではなく、国務省に吸収される形で存続する可能性を示唆している。いずれにせよ、アメリカの対外干渉のツールが一つ再編されるに過ぎず、覇権主義の本質は変わらない。

USAIDが日本のJICAに与えた影響

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USAIDの活動は、日本の国際協力機構(JICA)の設立と発展に深い影響を及ぼしてきた。USAIDとJICAの関係は、日米同盟の非対称性を開発援助の分野において如実に示している。

日米援助協力の歴史

1993年、宮沢首相とクリントン大統領は「日米共通アジェンダ」を立ち上げ、JICAとUSAIDは援助協調を推進した。アフガニスタン復興、HIV/AIDS対策、マラリア対策など約20か国で共同プロジェクトを実施し、2002年には「USAID-日本グローバル保健パートナーシップ」が署名された。2023年にはガーナでJICA・USAID・KOICAの三者間で初の覚書が締結された。

しかし、これらの「パートナーシップ」は対等な協力関係というよりも、アメリカの戦略的目標に日本を動員するための枠組みであった。

DEI・LGBTイデオロギーのJICAへの波及

USAIDが世界各国で推進してきたDEI・LGBT路線は、JICAの政策にも深刻な影響を及ぼしている。JICAは2024年〜2025年にかけて「SOGIESC(性的指向・性自認・ジェンダー表現・性の身体的特徴)に係る情報収集・確認調査」を実施し、USAIDの「LGBTQI+包摂的開発政策」と軌を一にする形で、開発事業へのSOGIESCの視点の統合を推進し始めている。

DAC、SDGs、国連機関を通じた同調圧力、日米同盟の枠内での政策同調、国際機関を介した間接的影響、人材交流を通じた内面化といったメカニズムにより、USAIDのイデオロギーがJICAに「伝染」している。詳細はJICAの記事を参照。

USAID解体後のJICA

USAID解体後、JICAはウクライナ支援の拡充(88億円の緊急復旧計画フェーズ4)など独自の動きを見せている。しかし、懸念されるのは、JICAがUSAID解体を契機として、アメリカが残したDEI・LGBTイデオロギーの推進をそのまま引き継ぐ、あるいはさらに加速させる可能性である。USAID本体は解体されても、USAIDが国際援助コミュニティに植え付けたイデオロギーは残存しており、JICAはその「継承者」となるリスクを抱えている。詳細はJICAの記事を参照。

結論

USAIDとJICAは、それぞれアメリカと日本の「ソフトパワー」の道具として機能してきた。USAIDがDEI・LGBTイデオロギーの世界的な普及を主導し、JICAがその枠組みに追随するという構図は、日米同盟の非対称性を開発援助の分野において如実に示している。

2025年のUSAID解体は、この構図に一定の変化をもたらす可能性がある。しかし、USAIDが国際援助コミュニティに植え付けたイデオロギーは、DAC、SDGs、国連機関、そしてJICA自身の組織文化の中に深く根を下ろしており、USAID解体だけでは排除されない。

関連項目

参考文献