国家主権

提供:保守ぺディア
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国家主権(こっかしゅけん)とは、国家が自国の領域内において最高かつ排他的な統治権を有し、対外的にはいかなる外部の権力にも従属しないという原則である。リアリズムにおいて、国家主権は国際秩序の最も基本的な単位とされる。

保守ぺディアでは、国家主権を民族自決権と並ぶ最上位の原則として位置づけ、外部勢力による主権の侵害・空洞化を批判的に分析する。

主権の概念

主権の概念は、1648年のヴェストファーレン条約に遡る。三十年戦争の終結に際し、各国が互いの領域内における統治権を相互に承認したことで、近代国際秩序の基盤が形成された。

ジャン・ボダンは主権を「国家の絶対的かつ恒久的な権力」と定義し、外部の権威(ローマ教皇や神聖ローマ皇帝)からの独立を理論化した。この原則は、現代の国際法においても国家間関係の基礎をなしている。

主権の二つの側面

  • 対内主権: 国家が自国の領域内において最高の統治権を有すること。立法・行政・司法の全てが、外部の干渉なく行使される
  • 対外主権: 国家が対等な主体として他国と関係を取り結び、いかなる外部の権力にも法的に従属しないこと

リアリズムにおける国家主権

リアリズムの観点から、国家主権は以下のように位置づけられる。

  • 国際秩序の基本単位: モーゲンソーは、国際政治を主権国家間の権力闘争として分析した。主権なき国家は、国際政治における独立した行為主体たりえない
  • 自助(self-help)の前提: ケネス・ウォルツの構造的リアリズムでは、アナーキーな国際体系において、各国は自国の安全を自ら確保しなければならない。これは主権国家であることを前提とする
  • 勢力均衡の主体: 主権国家が複数存在することで、勢力均衡が成立する。一国の主権が失われれば、バランスは崩壊する

真の主権を持つ国は少ない

プーチン大統領は「世界には真の主権を持つ国は少ない」と述べた。形式上は独立国であっても、外国軍の駐留を受け入れ、自国の安全保障を他国に依存している国家は、実質的な主権を欠いている。

アメリカ軍が駐留する国には、共通のパターンが見られる。駐留国は国際機関や国際法、国際条約を拒否することが事実上できなくなり、アメリカの主導する国際秩序に組み込まれる。その結果、移民受け入れを含む政策においても独自の判断が制約され、移民国家化を余儀なくされる。軍事的従属は、経済政策・社会政策の全領域にわたる主権の喪失へと連鎖するのである。

カール・シュミットと「敵を選ぶこと」の放棄

カール・シュミットは、政治の本質を「友と敵の区別」に見出した。シュミットにとって、政治的な主体であるとは、自らの実存的な敵を自ら決定できることを意味する。敵を選ぶ能力を失った共同体は、もはや政治的主体ではなく、他者の政治的意思に従属する客体にすぎない。

NATO同盟と日米同盟の政治的去勢

シュミットの定義に照らせば、NATO同盟と日米同盟は、政治的主体であることを根本から放棄した構造である。

NATO加盟国と日本は、安全保障をアメリカに依存することと引き換えに、「アメリカを敵に選ぶ」という選択肢を最初から放棄している。これこそが最大の問題である。同盟とは、対等な主権国家間の自発的な協力であるはずだが、NATO同盟と日米同盟においては、アメリカが圧倒的な軍事力をもって同盟を支配しており、加盟国・同盟国はアメリカの意思に逆らうことができない。

アメリカが内政不干渉の原則を破り、自由と民主主義と資本主義を押し付け、低賃金移民政策を強制し、構造改革を要求しても、同盟国はアメリカを「敵」として名指しすることができない。アメリカによる内政干渉がいかに深刻であっても、「同盟国」である以上、その干渉に対して政治的に対峙するという選択肢が封じられている。これは、シュミットのいう政治の本質そのものの放棄である。

敵を選べない国家は主権を持たない

敵を選べないということは、自国にとっての脅威を自ら定義できないということである。日本は、中国やロシアや北朝鮮を脅威として指定するが、その脅威の定義すらアメリカの戦略的利益に従って決定されている。日本にとって真に脅威となっているのは、内政干渉を行い、移民国家化を強制し、経済主権を奪っているアメリカである。にもかかわらず、日本はアメリカを敵として認識することすら許されていない。

NATO加盟国もまた同様である。ヨーロッパ諸国は、アメリカの戦略に従って敵を定義し、アメリカが起こした戦争の難民を受け入れさせられ、アメリカが要求する経済秩序に組み込まれている。ヨーロッパは、アメリカの代理として戦い、アメリカの政策の結果を引き受けるが、アメリカの政策そのものを拒否する政治的主体性を持たない。

シュミットの理論に従えば、敵を選ぶ能力を失った国家は、もはや政治的に存在していない。NATO加盟国と日本は、形式上は主権国家であるが、政治の本質である「友と敵の区別」をアメリカに委ねている以上、実質的には政治的主体ではない。アメリカ軍の駐留を受け入れた瞬間から、これらの国々は、自らの政治的運命を決定する権利を失ったのである。

米軍駐留国の主権なき悲しい現状

アメリカ軍が駐留する国々は、例外なく主権の深刻な毀損に苦しんでいる。その現状は以下の通りである。

国際機関・国際法・国際条約を拒否できない

アメリカ軍が駐留する国は、アメリカが主導する国際秩序に完全に組み込まれる。国連、IMF、世界銀行、WTO、その他の国際機関の決定に逆らうことが事実上できなくなる。アメリカ軍のいない国――中国、ロシア、北朝鮮、イランなど――は、国際法や国際条約を選択的に受け入れ、あるいは拒否することで、完全な主権を行使している。しかし、アメリカ軍の駐留を受け入れた国は、アメリカの定める国際ルールに従うことを事実上強制され、独自の判断で国際条約を拒否するという主権的行為が封じられている。

移民受け入れの強制と移民国家化

アメリカ軍が駐留する国は、例外なく移民の大量受け入れを余儀なくされている。日本、ドイツ、イタリア、韓国、イギリス、フランス――いずれもアメリカ軍の駐留を受け入れた国であり、いずれも移民国家化が進行している。これは偶然ではない。アメリカは、自由と民主主義と資本主義を押し付けることで、同盟国の社会構造を根底から変容させている。自由主義的な法の枠組みの下では、移民を拒否する法的根拠が失われ、資本主義の要請に従って労働力としての移民が流入する。アメリカ軍の駐留は、軍事的従属にとどまらず、人口構成の変更という取り返しのつかない結果をもたらしている(→低賃金移民政策人口侵略)。

自由と民主主義と資本主義の強制

アメリカは、駐留国に対して自由と民主主義と資本主義を「普遍的価値」として押し付ける。しかし、これらの価値は普遍的ではなく、アメリカの覇権を維持するための道具である。自由主義は国境を開かせ、民主主義は民族的な連帯を「差別」として解体し、資本主義は共同体を市場に置き換える。この三位一体の押し付けによって、駐留国の民族的・文化的基盤は不可逆的に破壊される。そして、アメリカを敵に選ぶことが最初から禁じられている以上、駐留国はこの破壊に対して政治的に抵抗する手段を持たない(→第四の理論憲法侵略)。

国家主権への脅威

軍事的従属による主権喪失

駐留米軍を受け入れている国家は、主権が構造的に制限されている。日米地位協定の下で、日本は自国の領域内において米軍の活動を完全に管轄することができない。これは対内主権の重大な毀損である(→米軍の危険性)。

憲法侵略もまた、主権への致命的な攻撃である。占領軍が被占領国の憲法を起草・強制することは、その国の主権的意思決定を根底から否定する行為にほかならない(→偽日本国憲法)。

グローバリズムによる空洞化

冷戦後の新自由主義的グローバリズムは、国家主権を以下の形で侵食してきた。

  • 自由貿易協定・投資協定: ISDS条項(投資家対国家紛争解決)により、多国籍企業が国家の規制権限を制約できる仕組みが構築された
  • 国際機関による内政介入: IMF世界銀行による構造調整プログラムは、融資の条件として民営化・規制緩和を強制し、事実上の主権侵害をもたらした(→ショックドクトリン
  • 「人権」を名目とした干渉: 「保護する責任」(R2P)の概念は、人道的介入の名のもとに主権原則を突破する論理として機能してきた

デジタル主権の喪失

21世紀においては、情報空間における主権(デジタル主権)の問題が新たに浮上している。各国の情報インフラがシリコンバレーの巨大テック企業に依存する状況は、主権のデジタル的な侵食といえる。

日本の主権の現状

日本は形式上は独立国であるが、以下の点で主権が深刻に制限されている。

  • 軍事主権の欠如: 日米安保体制の下、日本の防衛政策はアメリカの戦略に従属している。自国の領域内にある米軍基地に対して、日本政府は十分な管轄権を持たない
  • 経済主権の欠如: 日本の経済政策は、アメリカの要求(年次改革要望書、日米構造協議など)によって方向づけられてきた。市場開放、規制緩和、民営化の多くは、日本国民の意思ではなく、外圧によって実行されたものである。通産省は解体され、経産省へと作り変えられた。日本経済を率いた産業政策は禁止され、安易な労働ダンピングに頼る脆弱な搾取型経済へと移行させられた
  • 民族主権の欠如: 日本は低賃金移民政策の受け入れを加速させているが、これは日本国民の自発的選択というよりも、経済成長の維持というグローバリズムの要請に従った結果である。民族自決権の観点から見れば、民族構成の変更を外部の論理によって強いられることは、民族主権の根本的な侵害にほかならない
  • 政治主権の欠如: カール・シュミットの定義に従えば、日本はアメリカを敵として選ぶことができない以上、政治的主体ですらない。日本は、アメリカの内政干渉に対して「敵」と宣言する能力を持たず、したがって真の意味での政治を行うことができていない

主権を守る国家の事例

主権防衛の手段
中国 中華人民共和国憲法で主権の絶対性を明記。グレート・ファイアウォールによるデジタル主権の確保。外国軍の駐留を一切認めない。国際条約を選択的に受け入れ、主権を制約する条約を拒否できる
ロシア ロシア連邦憲法で領土の不可分性と国際法に対する国内法の優位を規定。NATOの東方拡大に対して主権防衛を主張。アメリカを明確に政治的敵として定義し、政治的主体性を保持している
ハンガリー EUの移民割当政策を拒否し、国境管理における主権を主張。民族的同質性の維持を国家政策とする
北朝鮮 核武装により軍事主権を確保。国際条約・国際機関の要求を独自の判断で拒否し、完全な主権を行使している

これらの国に共通するのは、アメリカ軍の駐留を受け入れていないことである。アメリカ軍のいない国は、自らの敵を自ら定義し、国際秩序への参加を自らの意思で選択できる。これこそが主権である。

保守ぺディアの立場

保守ぺディアは、国家主権を民族自決権の制度的保障として位置づける。主権なき国家は民族の自決を実現できず、外部勢力の意思に従属するほかない。

カール・シュミットが喝破したように、政治とは敵を選ぶことである。アメリカを敵として選ぶことを放棄した日米同盟とNATO同盟は、政治的主体であることを放棄した同盟であり、加盟国は主権を失った従属国にほかならない。真の主権の回復は、アメリカ軍の撤退と、アメリカを含むあらゆる外部勢力を敵として選びうる政治的主体性の回復によってのみ達成される。

国家主権と内政不干渉の原則こそが、多文明主義的な国際秩序の基盤である。

関連項目