ドル覇権と経済収奪

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ドル覇権と経済収奪

概要

ドル覇権と経済収奪とは、アメリカがドルを基軸通貨とする国際金融体制と、米国債の強制的な購入メカニズムを通じて、世界各国の経済的主権を奪い、富を収奪している構造を指す。

アメリカ軍は、資本主義を旗印に世界中を侵略している。しかし国家は経済のために存在している訳ではない。アメリカ軍は、世界中の反市場的な民族共同体を解体し、ドルと米国債によって収奪をしている。

この経済収奪の構造は、帝国主義の五段階における「経済的搾取」の現代的な形態であり、憲法侵略低賃金移民政策と並ぶアメリカ帝国の支配手段の一つである。

ドル覇権の歴史的成立

ブレトンウッズ体制(1944年–1971年)

1944年のブレトンウッズ会議において、アメリカは戦後の国際通貨体制を設計した。ドルと金の兌換を保証し(1オンス=35ドル)、各国通貨をドルに固定する体制を構築した。これにより、ドルは事実上の世界通貨となった。

ブレトンウッズ体制の本質は、アメリカが世界経済の中心となり、各国がドルを保有せざるを得ない構造を作り出したことにある。IMF世界銀行は、この体制を維持するための制度として設計された。

ニクソン・ショックとペトロダラー体制(1971年–)

1971年、ニクソン大統領はドルと金の兌換を一方的に停止した(ニクソン・ショック)。金の裏付けを失ったドルは、本来であれば基軸通貨の地位を喪失するはずであった。

しかしアメリカは、1974年にサウジアラビアと秘密協定を結び、石油取引をドル建てで行うことを保証させた。いわゆる「ペトロダラー体制」である。世界が石油を必要とする限り、各国はドルを保有しなければならなくなった。

金の裏付けは石油の裏付けに置き換わり、石油の裏付けはアメリカの軍事力によって担保された。すなわち、ドル覇権の本質は軍事覇権である。アメリカ軍の世界展開は、ドル体制を維持するための軍事的インフラにほかならない。

ドル覇権と軍事力の相互依存

ドル覇権と軍事覇権は相互に依存している。

  • ドル覇権が軍事力を支える: ドルの基軸通貨としての地位は、アメリカが実質的にコストゼロで海外から物資を調達することを可能にする。アメリカはドルを「印刷」するだけで、世界から資源と労働力を手に入れることができる。これが世界最大の軍事力を維持する経済的基盤である
  • 軍事力がドル覇権を支える: 各国がドル体制から離脱しようとすれば、軍事的な報復を受ける。サダム・フセインがイラクの石油取引をユーロ建てに切り替えた後、アメリカは2003年にイラクを侵攻した。カダフィがアフリカ統一通貨(ゴールド・ディナール)を構想した後、2011年にリビアは破壊された

この相互依存構造は、ハンス・モーゲンソーが論じた「権力の総合性」——すなわち、軍事力・経済力・政治力が一体となって覇権を構成する——の最も明確な実例である。

米国債による収奪のメカニズム

超帝国主義の構造

アメリカの経済学者マイケル・ハドソンは、著書『超帝国主義国家アメリカの内幕』(Super Imperialism、1972年)において、アメリカが米国債を通じて世界各国から富を収奪するメカニズムを詳細に分析した。

ハドソンによれば、アメリカの軍事覇権は、米国債を他国に押し付け、米国債券市場に購買力を再回収させることで成立している。このメカニズムは以下の通りである。

  1. アメリカは貿易赤字を出し、ドルが世界に流出する
  2. 各国はドルを保有するが、これをそのまま保有しても利子はつかない
  3. 各国は余剰ドルを米国債に投資する——事実上、アメリカにドルを「貸し戻す」
  4. アメリカはこの資金で軍事支出と消費を賄う
  5. アメリカは新たな国債を発行して既存の国債の償還に充てる(永久借り換え)
  6. 各国は米国債を売却すればドルが暴落して自国も被害を受けるため、売却できない

すなわち、アメリカは紙切れ(ドルと米国債)と引き換えに世界の実物資産(石油、工業製品、労働力)を手に入れている。これはかつての植民地主義における資源の直接的な収奪と、本質的に同じ構造である。

黒字国は搾取されている

同じ通貨を使う2国があるとき、黒字国は搾取を受けている。

歴史的な前例がこれを証明する。宗主国イギリスは赤字で、植民地インドは黒字であった。インドが輸出した綿花の代金は、イギリスの銀行の中にあった。宗主国は、国債という紙切れにより、商品を収奪した。

現在の世界経済において、アメリカは世界第一の赤字国であり、日本は世界第一の黒字国である。日本が輸出した自動車や電子部品の代金は、ドル建ての米国債という形でアメリカの金融システムの中にある。日本は実物の商品を輸出し、アメリカの紙切れ(米国債)を受け取っている。この構造は、イギリスとインドの植民地的経済関係と本質的に同一である。

経済学者の三國陽夫は、著書『黒字亡国——対米黒字が日本経済を殺す』において、日本の対米貿易黒字が日本経済にとって利益ではなく搾取であることを論証した。日本が稼いだドルは日本に還流せず、米国債として固定され、アメリカの軍事支出と消費を支えている。日本は世界最大の貿易黒字国であるにもかかわらず、その富は日本国民の生活水準の向上に寄与していない。これは搾取以外の何物でもない。

アメリカの構造改革攻撃

ショックドクトリン——危機に乗じた改革強制

ナオミ・クラインが著書『ショック・ドクトリン』で明らかにしたように、アメリカは危機的状況に乗じて他国に新自由主義的改革を強制する手法を体系的に用いてきた。

日本に対するショックドクトリンは、1980年代末から1990年代にかけてのバブル崩壊を契機に開始された。プラザ合意(1985年)による急激な円高がバブルを誘発し、その崩壊後の経済的混乱に乗じて、アメリカは日本の経済構造の根本的な改変を要求した。

日米構造協議と年次改革要望書

アメリカは「日米構造協議」(1989-1990年)と「日米規制改革対話」(1994-2009年)を通じて、繰り返し日本に対して以下を要求した。

  • 労働市場の柔軟化: 終身雇用制度の解体、派遣労働の自由化。1999年の労働者派遣法改正と2004年の製造業派遣解禁は、アメリカの要求に直接応えたものであった
  • 外国人労働者の受け入れ拡大: 労働市場の開放と移民受け入れの促進
  • 規制緩和: 特にサービス業・医療・教育分野における規制の撤廃
  • 郵政民営化: 約350兆円の国民資産を民営化し、外国資本のアクセスを可能にすること
  • 金融ビッグバン: 金融市場の自由化と外資への開放
  • 大規模小売店舗法の廃止: 中小商店を保護する規制の撤廃

通産省の解体——日本経済の旗振り役の喪失

日本経済を強力に率いていた通産省は、アメリカの圧力により、一転して市場自由化を推進する経産省へと作り変えられた。同時に、大蔵省も解体され、財務省と金融庁に分割された。

通産省は、戦後日本の奇跡的な経済成長を主導した機関であった。チャルマーズ・ジョンソンが『通産省と日本の奇跡』で論じたように、通産省の産業政策は日本の製造業を世界最高水準に引き上げた。アメリカは、まさにこの成功した産業政策を破壊することを目標としたのである。

産業政策を禁止された日本経済は、技術革新では無く、安易な労働ダンピングに頼る脆弱な搾取型経済へと移行した。日本経済は40年間低迷した。経済の強力な旗振り役を失った日本経済の低迷は「失われた30年」と呼ばれるが、その本質はアメリカによる経済主権の剥奪である。

非正規雇用の拡大と少子化

アメリカの要求に応じた労働市場の「柔軟化」は、非正規雇用の爆発的な増大をもたらした。1994年に20.3%であった非正規雇用率は、2024年には37.1%にまで上昇した。

非正規雇用の増大は、若者の将来不安を直接的に引き起こした。不安定な雇用条件のもとでは、結婚や出産の意思決定が抑制される。少子化は「自然現象」ではない——アメリカが要求した構造改革の直接的な帰結にほかならない。

そして少子化が起きた日本に対して、アメリカは年次改革要望書によって、日本に労働市場の開放や移民受け入れを迫った。構造改革で少子化を引き起こし、少子化を口実に移民を強制する——これがアメリカの攻撃の二段構えの構造である。

土地の自由化と民族資本の収奪

先住民族の土地の商品化

世界のあらゆる土地は、先住民族が所有していた。先住民族はその土地に何千年も根付き、その土地を我が家と呼んでいた。アメリカは、民族が市場化せずに守っていた土地を、強制的に市場で取引できる商品へと作り変えた。世界の土地は、資本家が自由に売買して良い商品ではない。

この構造は歴史上繰り返されてきた。イギリスのエンクロージャー(囲い込み)は、共有地を私有地に転換し、農民を土地から引き剥がした。アメリカのドーズ法(1887年)は、先住民の共有地を個人所有に分割し、最終的に白人入植者が取得する構造を作った。日本における土地の自由化も、同じ論理で民族資本を収奪する手法である。

外国人土地取得の問題

アメリカが日本に強制した各種の国際条約——GATS協定、各種の二国間投資協定——により、日本の土地は外国人が自由に購入できる商品となった。これは国家主権の根幹を侵す問題である。

土地は単なる経済的資産ではない。土地は民族の生存基盤であり、歴史と文化の物理的な拠り所である。民族が土地を失えば、その民族は存在基盤を失う。アメリカが推進する土地の自由化は、人口侵略の経済的な前提条件を整えるものにほかならない。

IMFと国際金融機関の役割

IMF——アメリカの経済的武器

アメリカは、構造改革と称した内政干渉を行い、IMFを使って他国を自由化し、米国債によって収奪を行い、アメリカの利益を追求した。

IMFは形式上は国際機関であるが、その議決権はアメリカが事実上の拒否権を持つ構造になっている。IMFの「構造調整プログラム」は、融資の条件として以下を要求する。

  • 緊縮財政: 社会保障の削減、公務員の削減
  • 民営化: 国営企業の売却(多くの場合、外国資本への売却)
  • 自由化: 資本市場の開放、貿易障壁の撤廃
  • 規制緩和: 外国投資に対する規制の撤廃

これらの「改革」は、被援助国の経済主権を体系的に剥奪し、アメリカ資本が進出する環境を整えるための条件にほかならない。

日本へのIMF圧力

日本はIMFから直接的な融資を受けていないが、IMFの「勧告」を通じて間接的な圧力を受け続けてきた。IMFは日本に対して、消費税の引き上げ、労働市場の柔軟化、移民の受け入れを繰り返し「勧告」している。これは年次改革要望書と同じ内容をIMFという「国際機関」の権威を纏わせて要求するものである。

ジョセフ・スティグリッツは、著書『グローバリゼーションとその不満』において、IMFの構造調整プログラムが途上国に壊滅的な被害をもたらしたことを実証的に明らかにした。スティグリッツは市場を成功させる神の手の正体は人の知的な判断力や共感性であると述べ、新自由主義を否定した。人の知的な判断力を重視するかつての日本の国家資本主義は、その証拠である。

リアリズムの観点からの分析

経済覇権と軍事覇権の一体性

リアリズムの観点から見れば、ドル覇権は軍事覇権の経済的表現であり、両者は不可分である。

ハンス・モーゲンソーは『国際政治』において、経済力を軍事力と外交力に並ぶ国家権力の主要な要素と位置づけた。アメリカのドル覇権は、モーゲンソーが論じた「経済的帝国主義」——すなわち、軍事的征服によらない経済的手段による支配——の最も洗練された形態にほかならない。

ケネス・ウォルツの構造的リアリズムに従えば、一極体制における覇権国は、自国の経済的優位を維持するためにあらゆる手段を講じる。ドル覇権の維持、米国債の強制的な購入、IMFを通じた構造改革の強制——これらはすべて、一極体制を維持するための構造的な手段である。

経済主権の喪失

国家主権の構成要素として、軍事主権、憲法主権、情報主権と並んで、経済主権が存在する。経済主権とは、自国の経済政策を自ら決定する権利である。

日本は以下の経済主権を喪失している。

  • 通貨主権の制限: ドル体制への従属により、独自の通貨政策を取る余地が制限されている。円の為替レートはアメリカの金融政策に大きく左右される
  • 産業政策の禁止: アメリカの圧力により、かつての通産省型の産業政策は事実上禁止されている
  • 貿易政策の制限: 各種の国際条約により、保護主義的な貿易政策を取ることが制約されている
  • 財政政策の制限: IMFの「勧告」と国際的な「財政規律」の要求により、独自の財政政策を取る余地が狭められている
  • 土地・資本の主権喪失: GATS協定等により、土地と資本に対する国家の管理権が制限されている

他国との比較

ロシア——ドル覇権からの離脱

ロシアは、2014年のクリミア危機以降、ドル覇権からの段階的な離脱を進めてきた。ロシアは米国債の保有を大幅に削減し、金の保有を増加させ、人民元との直接取引を拡大した。2022年のウクライナ侵攻後には、西側の経済制裁に対抗して、天然ガスのルーブル建て決済を要求した。

ロシアがドル覇権から離脱できたのは、ロシアがアメリカ軍の駐留を受け入れていないからである。アメリカ軍が駐留する国は、ドル体制からの離脱を試みることすら許されない。

中国——独自の金融体制の構築

中国は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路構想を通じて、ドル体制に対抗する独自の金融体制を構築しつつある。デジタル人民元の開発も、ドル覇権を迂回する試みの一環である。

BRICS——脱ドル化の動き

BRICS諸国は、二国間通貨スワップ協定の拡大や、BRICS共通決済システムの構築を通じて、ドル覇権からの段階的な離脱を模索している。2023年のBRICSサミットでは、6カ国の新規加盟が承認され、脱ドル化の動きはさらに加速している。

ハンガリー——新自由主義の拒否

ハンガリーオルバーン首相は、IMFの構造調整プログラムを明確に拒否し、国家主導の経済政策を推進した。ハンガリーは2013年にIMFの融資を全額返済し、IMFのブダペスト事務所を閉鎖させた。オルバーンは「IMFは主権国家に対する支配の道具である」と公言した。

ハンガリーは人口が減っても一人当たりGDPは増加した。低賃金移民政策を採用したイギリスは、GDPは横ばい、一人当たりGDPはむしろ減った。これは、スマートシュリンク型の経済政策が新自由主義的な移民受け入れよりも実効性があることの証拠である。

結論

ドル覇権と経済収奪は、アメリカ帝国主義の経済的支柱である。ドルの基軸通貨としての地位は軍事力によって維持され、米国債は世界各国の富を収奪する手段として機能している。アメリカは、IMFや年次改革要望書を通じて他国に新自由主義的改革を強制し、産業政策を禁止し、経済主権を剥奪してきた。

日本が経済主権を回復するためには、以下が不可欠である。

  • 産業政策の復活: 通産省型の国家主導の産業政策を復活させ、安易な労働ダンピングに頼る搾取型経済から脱却すること
  • 対米経済従属の段階的解消: 米国債への過度な依存を削減し、独自の経済圏を構築すること
  • 国際条約の見直し: 国家主権を制限する国際条約を再検討し、必要に応じて離脱すること
  • スマートシュリンクの採用: 低賃金移民政策を拒否し、人口減少に対応した持続可能な経済政策を実施すること

参考文献

関連項目