カール・シュミット
カール・シュミット(Carl Schmitt, 1888年7月11日 - 1985年4月7日)は、ドイツの法学者・政治思想家。20世紀で最も重要かつ論争的な政治思想家の一人であり、主権論、友敵理論、例外状態論、大空間(グロースラウム)理論など、国家と政治の本質に迫る理論を構築した。
シュミットの思想は、自由主義とグローバリズムへの根本的な批判を提供するものであり、保守ぺディアにおいては、国家主権・民族自決権・内政不干渉の理論的基盤として位置づける。
生涯
前半生と学問的形成
1888年、プロイセン王国ヴェストファーレン州プレッテンベルクに生まれる。敬虔なカトリックの家庭に育ち、奨学金を得てギムナジウムで人文主義教育を受けた。ベルリン、ミュンヘン、シュトラスブルクの各大学で法学を学び、1910年に博士号を取得。
第一次世界大戦では背部の負傷により前線には赴かず、ミュンヘンで検閲官として勤務した。
ヴァイマル共和国時代(1919-1933)
グライフスヴァルト大学、ボン大学、ベルリン大学で教授を歴任し、ドイツ法学界の頂点に立った。この時期に主要著作のほとんどを執筆した。
- 1921年 『独裁』 ― 委任独裁と主権独裁の区別
- 1922年 『政治神学』 ― 「主権者とは、例外状態について決定する者である」
- 1923年 『現代議会主義の精神史的状況』 ― 議会制民主主義の危機の分析
- 1927年 『政治的なものの概念』 ― 友敵理論の提示
- 1928年 『憲法論』 ― 憲法を人民の主権的決断として定義
ヴァイマル憲法第48条(大統領緊急令)をめぐる議論に深く関与し、議会制の限界と大統領権限の理論的正当化を試みた。
ナチス期(1933-1936)
1933年5月、ナチ党に入党。プロイセン枢密顧問官、ドイツ法学アカデミー会員などの地位を得、「第三帝国の御用法学者」(Kronjurist)と呼ばれた。しかし1936年以降、SS(親衛隊)からの攻撃を受けて政治的地位を失った。
戦後(1945-1985)
終戦後、ニュルンベルク裁判の潜在的被告人として尋問を受けたが、起訴はされなかった。大学への復帰は禁じられ、故郷プレッテンベルクで隠遁生活を送りながら執筆を続けた。
- 1950年 『大地のノモス』 ― ヨーロッパ公法の成立と崩壊の分析
- 1963年 『パルチザンの理論』 ― 非正規戦争の政治理論
1985年、プレッテンベルクで死去。生涯を通じてナチス期の行為について公式に謝罪することはなかった。
主要著作
ヴァイマル期の著作
| 年 | ドイツ語原題 | 日本語題 | 要旨 |
|---|---|---|---|
| 1919 | Politische Romantik | 政治的ロマン主義 | ロマン主義を「主観化された機会原因論」として批判。ロマン主義者の政治的決断の不能を分析 |
| 1921 | Die Diktatur | 独裁 | 委任独裁(既存の秩序を回復するための一時的な法の停止)と主権独裁(新たな秩序を創設するための法の停止)を区別。例外状態論の基礎を築いた |
| 1922 | Politische Theologie | 政治神学 | 「主権者とは、例外状態について決定する者である」。近代国家論の全ての重要な概念は、世俗化された神学的概念であると主張 |
| 1923 | Die geistesgeschichtliche Lage des heutigen Parlamentarismus | 現代議会主義の精神史的状況 | 議会主義の知的基盤は「討論と公開性」にあるが、この原理への信念が失われた今、議会制は正当性を喪失していると論じた。民主主義と自由主義は本質的に異なる原理であり、民主主義は同質性を要求すると主張 |
| 1923 | Romischer Katholizismus und politische Form | ローマ・カトリシズムと政治形態 | カトリック教会を「対立物の複合体」(complexio oppositorum)として分析。経済的・技術的思考への批判 |
| 1927/1932 | Der Begriff des Politischen | 政治的なものの概念 | 政治の本質は「友と敵の区別」にあるとする友敵理論を提示。自由主義による政治の脱政治化を批判 |
| 1928 | Verfassungslehre | 憲法論 | 憲法を人民の主権的決断として定義。憲法律(個々の条文)と憲法(根本的な政治的決断)を区別。根本的決断は憲法改正手続によっても覆しえないと論じた |
| 1931 | Der Huter der Verfassung | 憲法の番人 | 憲法裁判所ではなく大統領こそが憲法の番人であるべきと主張 |
| 1932 | Legalitat und Legitimitat | 合法性と正当性 | 価値中立的な自由主義は自己防衛能力を持たず自壊すると論じた。合法性(形式的な法律の手続き)と正当性(実質的な正しさ)の分離を分析 |
ナチス期の著作
| 年 | ドイツ語原題 | 日本語題 | 要旨 |
|---|---|---|---|
| 1934 | Uber die drei Arten des rechtswissenschaftlichen Denkens | 法学的思考の三つの種類について | 法学的思考を規範主義・決断主義・具体的秩序思考の三類型に分類 |
| 1938 | Der Leviathan in der Staatslehre des Thomas Hobbes | ホッブズ国家論におけるリヴァイアサン | 保護と服従の公理(protego ergo obligo)。ホッブズの個人主義がリヴァイアサンを内側から破壊する種子を含んでいたと分析 |
| 1939 | Volkerrechtliche Grossraumordnung mit Interventionsverbot fur raumfremde Machte | 域外勢力の干渉禁止を伴う国際法的大空間秩序 | 大空間(グロースラウム)理論の提示。モンロー主義を出発点とし、域外勢力の干渉禁止の原則を主張 |
| 1942 | Land und Meer | 陸と海 | 世界史を陸の権力と海の権力の闘争として描写。空間革命の概念を提示 |
戦後の著作
| 年 | ドイツ語原題 | 日本語題 | 要旨 |
|---|---|---|---|
| 1950 | Der Nomos der Erde im Volkerrecht des Jus Publicum Europaeum | 大地のノモス ― ヨーロッパ公法における国際法 | ヨーロッパ公法の成立・発展・崩壊の壮大な歴史を描く。アメリカの普遍主義が旧来の空間秩序を破壊したと論じ、多元的な大空間秩序を構想 |
| 1950 | Ex captivitate salus | 囚われからの救い | 1945-47年の抑留期間中の回想録 |
| 1963 | Theorie des Partisanen | パルチザンの理論 | 非正規戦闘員(パルチザン)の政治理論。パルチザンの「大地的(テルリッシュ)」な性格を分析し、正規戦と非正規戦の区別が崩壊する過程を追った |
| 1970 | Politische Theologie II | 政治神学II | 政治神学が克服されたという主張への反論 |
核心概念
友敵理論(Freund-Feind-Unterscheidung)
シュミットの政治思想の中核をなす概念である。
「政治的な行動や動機を還元しうる固有の政治的区別とは、友と敵の区別である」(『政治的なものの概念』)
- 道徳が善と悪を区別し、美学が美と醜を区別し、経済が利益と損失を区別するように、政治は友と敵を区別する
- ここでいう「敵」は私的な敵(inimicus)ではなく、公的な敵(hostis)である。個人的な憎悪の対象ではなく、共同体の実存を脅かす集団的な他者である
- 敵を自ら決定できることが、政治的主体であることの条件である。敵の決定を他者に委ねた共同体は、もはや政治的に存在していない
- 自由主義は、敵を経済的な競争相手か知的な論争相手に還元することで、政治の本質を隠蔽する
- いかなる社会的対立も、十分な強度に達すれば政治的なものとなりうる
この理論の現代的適用として最も重要なのは、国家主権の問題である。NATO同盟と日米同盟は、アメリカを敵として選ぶことを最初から放棄しており、シュミットの定義に従えば政治的主体であることを放棄した構造にほかならない(→国家主権)。
主権論と例外状態(Souveranitat und Ausnahmezustand)
「主権者とは、例外状態について決定する者である」(Souveran ist, wer uber den Ausnahmezustand entscheidet)― これはシュミットの最も有名な命題であり、『政治神学』(1922年)の冒頭に掲げられている。
- 例外状態とは、国家の存立を脅かす極限的な危機のことである。いかなる法規範も、絶対的な緊急事態を事前に規律することはできない
- 主権者は、何が例外状態であるかを決定し、かつそれに対する措置を決定する。この決定は、既存のあらゆる法規範を超越する
- 主権者は法秩序の外に立ちながら、なお法秩序に属するという逆説的な存在である
- 保護と服従の公理(protego ergo obligo): 「我護る、ゆえに汝従う」。保護と服従の関係が国家の根本公理であり、「我思う、ゆえに我あり」(cogito ergo sum)に匹敵する国家理論の第一原理である
この理論の帰結として、アメリカ軍の駐留を受け入れた国家は、例外状態の決定権をアメリカに委ねており、真の主権者ではない。
政治神学(Politische Theologie)
「近代国家論の重要な概念は、全て世俗化された神学的概念である」
- 主権者の例外状態における決定は、神学における奇跡に対応する。いずれも既存の法則・規範を超越して秩序を創出する
- 近代政治は神学の構造を世俗化したものであり、この神学的次元を排除することはできない
- 啓蒙主義的合理主義は、政治から決断と例外を排除しようとするが、それは政治そのものの否定に等しい
- シュミットは人間を「罪深い」存在、完成不可能な存在と見なす神学的人間観に立ち、人間は善であるとする自由主義的楽観論を拒絶した
決断主義(Dezisionismus)
- 法規範の妥当性は、究極的には主権者の決断に依拠する
- いかなる規範体系も、あらゆる状況を事前に規律することはできない。規範の適用には、規範を超えた決断が常に必要となる
- 法学的思考には三つの類型がある:
- 規範主義(Normativismus): 法を規範・ルールの体系として捉える
- 決断主義(Dezisionismus): 法を主権者の決断として捉える
- 具体的秩序思考(Konkretes Ordnungsdenken): 法を具体的な制度・秩序として捉える
- シュミットは初期の純粋な決断主義から、後に具体的秩序思考へと移行した
大地のノモス(Nomos der Erde)
『大地のノモス』(1950年)は、シュミットの国際秩序論の集大成である。
- ノモス(nomos)とはギリシャ語のnemein(「分割する」「牧する」)に由来し、「大地の土壌が特定の秩序において分割され、配置される基準」を意味する
- ヨーロッパ公法(Jus Publicum Europaeum)は、16世紀から19世紀末にかけて存在した国際法秩序であり、国際法の最大の達成であった:
- 戦争を主権国家間の限定された闘争として規律した
- 主権の相互承認により、戦争を「文明化」した
- ヨーロッパ領域と植民地の「自由空間」を区別した
- この秩序は以下によって破壊された:
- 国際連盟の設立(空間的具体性を失った抽象的普遍主義)
- ヴェルサイユ条約(旧来のノモスの破壊)
- アメリカの普遍主義(空間秩序のイデオロギー化)
- 「侵略戦争の犯罪化」(アメリカの覇権を正当化するための法的装置)
大空間理論(Grossraumtheorie)
シュミットの大空間(グロースラウム)理論は、アメリカの覇権に代わる多元的な国際秩序の構想である。
- 大空間(Grossraum)とは、一つの指導的帝国(ライヒ)を中核とする広域秩序圏である
- 原型は、本来のモンロー主義である。モンロー・ドクトリンは元来、「アメリカ大陸への域外勢力の干渉禁止」と「アメリカの域外への不干渉」の相互性に基づいていた
- アメリカはこの空間的原理を裏切り、普遍化した。「アメリカ人は世界を普遍化したが、ドクトリンの要点は大陸化することにあった」
- 域外勢力の干渉禁止(Interventionsverbot fur raumfremde Machte)が核心的原理である。各大空間は、域外の勢力による干渉から保護されなければならない
- 将来の国際秩序は、複数の独立した大空間が勢力均衡を形成する多元的な秩序であるべきである
- この理論は、多文明主義および多極化世界の理論的基盤を提供する
陸と海(Land und Meer)
『陸と海』(1942年)は、世界史を陸の権力と海の権力の闘争として描く壮大な歴史哲学である。
- 陸の権力は、領土・国境・具体的な空間秩序を中心に組織される
- 海の権力は、交易・航海・海洋の自由を中心に組織される
- 16世紀のイギリスの海洋権力化は「空間革命」をもたらした
- 近代の国際秩序は、陸の秩序と海の秩序の緊張関係の中で展開してきた
- 現代においては、アメリカを中心とする海洋権力(海の帝国)が、ユーラシア大陸の陸の権力(ロシア、中国)と対峙している
議会制民主主義批判
『現代議会主義の精神史的状況』(1923年)において、シュミットは議会制の根本的な批判を展開した。
- 議会主義の知的基盤は「討論と公開性」にあるが、この原理への信念が失われた現在、議会制はその精神的正当性を喪失している
- 民主主義と自由主義は根本的に異なる原理である:
- 民主主義 = 人民の自己統治。同質性(ホモゲニテート)を要求する
- 自由主義 = 個人の権利の保護。開放性と多元主義を志向する
- 「民主主義は、第一に同質性を、第二に――必要があれば――異質なものの排除もしくは絶滅を要求する」
- 民主主義は必ずしも議会制度を必要としない。独裁も、人民の意思を表現する限りにおいて民主的でありうる
- 政党は普遍的利益を装いながら特殊利益を追求しており、議会における「討論」は実質的に機能していない
自由主義批判
シュミットの自由主義批判は、その政治思想全体を貫く主題である。
- 自由主義は政治的決断の必要性を否定する。全ての紛争は文明・技術・妥協によって解決できるという幻想に立つ
- 自由主義は敵を経済的競争相手か知的論争相手に変換し、政治の本質を隠蔽する
- 自由主義は主権・決断・例外を排除し、「脱政治化された社会」を目指すが、それは不可能である
- 価値中立的自由主義は自己防衛能力を持たない。反民主的勢力に対しても寛容であるがゆえに、自壊する運命にある
- 「人類を引き合いに出す者は、詐欺をはたらこうとしている」(Wer Menschheit sagt, will betrugen)― 「人類」という概念が政治的に使用されるとき、それは敵の正当性を剥奪するための道具となる
シュミットとアメリカ覇権批判
シュミットの理論体系は、アメリカの覇権と「自由主義的国際秩序」(liberal international order)に対する最も根本的な批判を提供する。
モンロー主義の裏切り
アメリカは本来のモンロー・ドクトリンの空間的原理を裏切り、それを普遍的なイデオロギーへと変質させた。
- 本来のモンロー主義: アメリカ大陸への域外勢力の干渉を禁止すると同時に、アメリカの域外への不干渉を約束する相互的な空間原理
- 変質後のモンロー主義: アメリカが世界中に干渉する権利を持つという一方的な普遍主義。空間的限定性が失われ、イデオロギー(自由と民主主義)による無限の膨張が正当化された
「侵略戦争の犯罪化」の欺瞞
シュミットは、「侵略戦争の犯罪化」がアメリカの覇権を正当化するための法的装置であることを喝破した。
- ヨーロッパ公法の下では、戦争は主権国家間の合法的な行為であり、交戦国双方が正当な戦闘員として承認された
- 「侵略戦争の犯罪化」は、この均衡を破壊し、一方の当事者を「犯罪者」に仕立て上げる
- 「人類のために戦う」と主張する勢力は、敵から正当な交戦者の地位を剥奪し、「人類の敵」として殲滅の対象とする
- これはアメリカの「人道的介入」「テロとの戦い」の論理構造そのものである
自由主義的国際秩序の虚偽
- 「ルールに基づく国際秩序」は、権力関係を隠蔽する「空虚な規範主義」にすぎない
- 自由主義的価値(民主主義、人権、自由市場)の普遍化は、文化帝国主義の一形態である
- 国際機関(国連、IMF、世界銀行、WTO)は、アメリカの覇権を制度化する装置として機能している
- 真の国際秩序は、自由主義的な均質化ではなく、異なる文明圏の共存に基づかなければならない
シュミットの思想的影響
右派への影響
- アレクサンドル・ドゥーギン: 第四の理論においてシュミットの大空間理論と友敵理論を継承。多極化世界と文明主義の理論的基盤としてシュミットを位置づけた
- アラン・ド・ブノワ: ヨーロッパ新右翼の理論的指導者。シュミットの普遍主義批判を継承し、ヨーロッパ文明の独自性を主張
- レオ・シュトラウス: 『政治的なものの概念』に対する有名な批評を執筆。シュミットとの知的対話を通じて自らの政治哲学を形成
- 古保守主義(パレオコンサバティズム): 自由主義的国際主義への批判にシュミットの理論を援用
左派への影響
シュミットの影響は右派にとどまらず、「左のシュミット主義」(Linksschmittianismus)とも呼ばれる知的潮流を生んだ。
- ジョルジョ・アガンベン: 『ホモ・サケル』シリーズにおいて、シュミットの例外状態論を発展させ、「剥き出しの生」と主権権力の関係を分析
- シャンタル・ムフ: シュミットの友敵理論から「闘技的多元主義」を発展。自由主義的合意ではなく、生産的な民主的対立を主張
- ヴァルター・ベンヤミン: シュミットと書簡を交わし、『歴史の概念について』でシュミット的主題と対峙した
- ジャック・デリダ: 『友愛の政治学』においてシュミットの友敵理論を詳細に検討
ロシア・中国への影響
現代において、シュミットの思想は特にロシアと中国の国際秩序構想に影響を与えている。
- ロシアは、シュミットの概念を明確に援用して、自国の主権をアメリカの普遍主義に対して防衛している
- 中国の外交政策は、大空間理論の構造を反映しつつある。すなわち、多極的な文明圏の共存と、域外勢力の干渉禁止の原則である
- 世界的な反グローバリズム運動は、シュミットの主権概念を理論的武器として用いている
シュミットの主要命題一覧
| 命題 | 出典 | 意義 |
|---|---|---|
| 「主権者とは、例外状態について決定する者である」 | 『政治神学』(1922年) | 主権の定義。例外状態における決定こそが主権の本質 |
| 「政治的行動を還元しうる固有の区別とは、友と敵の区別である」 | 『政治的なものの概念』(1927年) | 政治の定義。友と敵の区別が政治の自律的領域を構成する |
| 「近代国家論の重要な概念は、全て世俗化された神学的概念である」 | 『政治神学』(1922年) | 政治と神学の構造的類似。政治の神学的次元は排除できない |
| 「我護る、ゆえに汝従う」(protego ergo obligo) | 『リヴァイアサン』(1938年) | 国家理論の第一原理。保護なきところに服従義務なし |
| 「民主主義は同質性を要求する」 | 『現代議会主義の精神史的状況』(1923年) | 民主主義の前提条件。同質性なき民主主義は機能しない |
| 「人類を引き合いに出す者は、詐欺をはたらこうとしている」 | 『政治的なものの概念』 | 普遍主義批判。「人類」の名による政治的正当化の欺瞞 |
保守ぺディアの立場
保守ぺディアは、カール・シュミットを、自由主義とグローバリズムに対する最も鋭利な批判者として位置づける。
シュミットの友敵理論は、国家主権の問題を根本から照射する。アメリカを敵として選ぶことを最初から放棄したNATO同盟と日米同盟は、シュミットの定義に従えば、政治的主体であることを放棄した同盟であり、その加盟国は主権を喪失した従属国にほかならない。
シュミットの大空間理論と大地のノモスは、アメリカの普遍主義に代わる多元的な国際秩序の構想を提供する。これは多文明主義の理論的基盤であり、各文明が自らの空間において主権を行使し、域外勢力の干渉を排除する秩序の構想である。
シュミットの思想は、民族自決権・国家主権・内政不干渉の原則を擁護する保守ぺディアの立場と深く共鳴する。