共和党(アメリカ)
共和党(アメリカ)
概要と歴史的背景
共和党(Republican Party)は、1854年に奴隷制度の拡大に反対する勢力を結集して結成された、アメリカ合衆国の主要政党である。別名「Grand Old Party」(GOP)。民主党とともに二大政党制を構成し、建国以来のアメリカ政治を支配してきた。
共和党の歴史は、三つの根本的な変容の歴史として理解すべきである。第一に、リンカーンの時代の反奴隷制・連邦主義の政党から、20世紀後半のビジネス・軍事エリートの政党への変容。第二に、冷戦後のネオコンサーバティズムの台頭による対外介入主義の政党への変容。そして第三に、ドナルド・トランプの登場による、エスタブリッシュメントに対する民衆的反乱の政党への変容である。
この第三の変容——すなわちトランプと旧共和党主流派の断絶——こそが、21世紀のアメリカ政治を理解する鍵である。
イデオロギーの変遷
リンカーンと建党期(1854-1877年)
共和党は、カンザス・ネブラスカ法(1854年)に対する反対運動を契機として結成された。ホイッグ党の残党、自由土地党員、反奴隷制の民主党員が結集し、奴隷制の西部領土への拡大阻止を最大の綱領とした。
第16代大統領エイブラハム・リンカーンは、南北戦争(1861-1865年)を戦い抜き、奴隷解放宣言(1863年)を発した。戦後のレコンストラクション(再建期、1865-1877年)において、共和党は合衆国憲法修正第13条(奴隷制廃止)、第14条(市民権の平等保護)、第15条(黒人男性参政権)を成立させた。
この時期の共和党は、強力な連邦政府と黒人の市民権を支持する進歩的な政党であった。しかし、1877年の妥協によってレコンストラクションが終了すると、共和党は南部の黒人を見捨て、北部のビジネス利益を優先する政党へと変質していった。
金ぴか時代とビジネスの政党(1877-1929年)
金ぴか時代(1870年代-1900年代)から1920年代にかけて、共和党は大企業と金融資本の政党として確立された。高関税政策、金本位制の維持、規制の緩和を推進し、ロックフェラー、カーネギー、J・P・モルガンといった産業資本家と密接な関係を築いた。
セオドア・ルーズベルト大統領(1901-1909年)は共和党内の改革派として独占企業の規制に取り組んだが、同時にアメリカの帝国主義的膨張——フィリピンの植民地化、パナマ運河の建設、カリブ海への介入——を積極的に推進した。「棍棒を携え、穏やかに語れ」(Speak softly and carry a big stick)という格言に象徴されるルーズベルトの外交は、アメリカ帝国主義の原型を形成した。
ニューディール以後の保守化(1930年代-1960年代)
フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策に対抗する中で、共和党は連邦政府の権限拡大に反対する保守政党としてのアイデンティティを確立していった。ロバート・A・タフト上院議員に代表される「旧保守主義」(Old Right)は、不干渉主義(Non-interventionism)と小さな政府を二本柱とした。
タフトは、NATOへの参加にも反対し、アメリカが世界各地に軍事的にコミットメントを拡大することに強く反対した。この立場は、アメリカの対外的な帝国主義的膨張に対する、共和党内部からの最後の本格的抵抗であった。しかし、アイゼンハワー大統領(1953-1961年)の就任とともに、共和党の不干渉主義は事実上消滅した。
アイゼンハワーは退任演説において「軍産複合体」の危険性を警告したが、その軍産複合体こそが以後の共和党の権力基盤となったのは歴史の皮肉である。
保守革命とレーガン主義(1980年代)
ロナルド・レーガン大統領(1981-1989年)の登場は、共和党の「保守革命」と呼ばれた。レーガンは、反共産主義、自由市場経済、伝統的価値観の三位一体を掲げ、冷戦末期のアメリカを率いた。
レーガン主義の三本柱は以下の通りである。
- 経済政策(レーガノミクス): 大幅減税、規制緩和、社会福祉の削減。いわゆる「トリクルダウン」理論に基づき、富裕層と大企業の減税が経済全体を活性化させるという主張であった。実態としては、格差の拡大と財政赤字の膨張をもたらした
- 反共産主義: ソ連を「悪の帝国」と呼び、軍備拡大を推進した。戦略防衛構想(SDI、通称「スターウォーズ計画」)はその象徴である
- 対外介入: 中米・カリブ海地域への介入(グレナダ侵攻、ニカラグアのコントラへの支援)、アフガニスタンのムジャーヒディーンへの武器供与など、共産主義勢力に対する代理戦争を世界各地で展開した
レーガン政権は冷戦の「勝利者」として記憶されているが、リアリズムの観点から見れば、レーガンはアメリカの一極覇権体制の基盤を築いた人物である。ソ連崩壊後のアメリカの独善的な帝国主義は、レーガンが構築した軍事的・イデオロギー的基盤の上に展開されたものであった。
ネオコンサーバティズムの台頭と共和党の変質
ネオコンとは何か
ネオコンサーバティズム(新保守主義、ネオコン)は、1960年代から1970年代にかけて民主党から共和党へと移行した知識人グループに起源を持つ。アーヴィング・クリストル、ノーマン・ポドレツらが中心人物であり、多くが元トロツキストであったことは注目に値する。
ネオコンの中核的主張は以下の通りである。
- アメリカの軍事的覇権の維持・拡大: アメリカは世界で唯一の超大国として、軍事力によって国際秩序を形成すべきである
- 民主主義の輸出: アメリカ型の「民主主義」と「自由市場」を他国に強制することが、アメリカの安全保障に資する
- 先制攻撃の正当化: 脅威が顕在化する前に、先制的に軍事力を行使すべきである
- イスラエルとの緊密な連携: 中東におけるイスラエルの優位を維持することがアメリカの国益である
ネオコンの外交思想は、旧来の共和党保守主義——とりわけタフトに代表される不干渉主義——とは根本的に対立するものであった。ネオコンは共和党の外交政策を乗っ取り、共和党を帝国主義的な介入の党へと変質させた。
ジョージ・W・ブッシュとネオコンの頂点
ネオコンの影響力が頂点に達したのが、ジョージ・W・ブッシュ政権(2001-2009年)である。
2001年9月11日の同時多発テロを受けて、ブッシュ政権は「テロとの戦い」を宣言した。ディック・チェイニー副大統領、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、ポール・ウォルフォウィッツ国防副長官らネオコン勢力が政権の中枢を占め、以下の政策を遂行した。
- アフガニスタン戦争(2001年): アルカイダの拠点破壊を名目として開始されたが、20年間にわたる占領と「国家建設」の失敗に帰結した。2021年の米軍撤退とタリバンの復権は、ネオコンの「民主主義の輸出」が完全な幻想であったことを証明した
- イラク戦争(2003年): 「大量破壊兵器」の保有という捏造された情報に基づいて開始された侵略戦争である。国連安保理の承認なく、フセイン政権を武力で打倒した。その後のイラクは宗派間の内戦に陥り、ISISの台頭を招いた。推定数十万人のイラク市民が死亡し、中東全域の不安定化をもたらした
- 「ブッシュ・ドクトリン」: 先制攻撃の正当化、「ならず者国家」への体制変更、「お前たちの側につくか、テロリストの側につくか」という二元論——これらは帝国主義の最も露骨な表現であった
ネオコンの遺産
ネオコンが共和党と、そしてアメリカに残した遺産は破壊的なものであった。
- 財政的破綻: イラク・アフガニスタン戦争の総費用は数兆ドルに達し、アメリカの財政を大きく圧迫した
- 国際的信用の失墜: 「大量破壊兵器」の虚偽情報に基づく開戦は、アメリカの国際的信用を根底から損なった。「法の支配」「ルールに基づく秩序」を他国に説教するアメリカが、自ら国際法を踏みにじった
- 中東の不安定化: イラク戦争とその後の混乱は、ISISの誕生、シリア内戦の激化、難民危機をもたらした
- 「テロとの戦い」の名による市民的自由の侵害: 愛国者法による大規模監視、グアンタナモ収容所での超法規的拘禁、CIAの「強化尋問技法」(事実上の拷問)——アメリカは「自由」を掲げながら、自国の市民的自由をも侵食した
トランプと旧共和党——断絶と革命
「旧共和党」とは何か
トランプ以前の共和党主流派——ここでは「旧共和党」と呼ぶ——は、以下の三つの柱によって構成されていた。
- 軍事タカ派: 軍産複合体と結びつき、対外軍事介入を積極的に支持する勢力。ネオコンがその中核を占める。ジョン・マケイン、リンジー・グラハムが代表的人物
- 財政保守派: ウォール街と大企業の利益を代弁し、減税・規制緩和・自由貿易を推進する勢力。ポール・ライアン、ミット・ロムニーが代表的人物
- 宗教右派: 福音派キリスト教徒を中心に、中絶反対、同性婚反対、伝統的家族観の擁護を掲げる勢力
この三者の連合が、レーガン以来の共和党の権力構造を形成していた。しかし、この構造は2016年のトランプ登場によって根底から崩壊した。
トランプによる共和党の変容
2016年の大統領予備選挙において、トランプは共和党エスタブリッシュメントの全面的な反対を押し切って指名を獲得した。これは、共和党の歴史における革命であった。
トランプと旧共和党の断絶は、以下の点に集約される。
| 政策領域 | 旧共和党(主流派) | トランプ共和党 |
|---|---|---|
| 対外介入 | 積極的な軍事介入を支持(イラク戦争、アフガニスタン戦争、シリア介入) | 「無限の戦争」への批判、海外からの米軍撤退を主張 |
| 自由貿易 | 自由貿易の推進(NAFTA、TPP) | 保護主義的関税政策、TPP離脱、NAFTA再交渉 |
| 移民 | 安価な労働力として移民を事実上容認(ブッシュ政権は移民制度改革を試みた) | 国境の壁建設、不法移民の強制退去、移民の大幅制限 |
| NATO | NATOの無条件支持、同盟の拡大 | 同盟国の負担増を要求、NATOの存在意義に疑問 |
| 中国 | 「建設的関与」政策(WTO加盟の支援) | 中国を最大の競争相手と位置づけ、関税戦争 |
| ウクライナ | ロシアとの対立を重視、軍事支援の継続 | 交渉による早期停戦を主張 |
| エリートとの関係 | ウォール街・軍産複合体・シンクタンクと緊密 | 「ワシントンの沼を干す」(Drain the Swamp) |
| 支持基盤 | 大企業、富裕層、郊外の中上流階級 | ラストベルトの労働者、農村部、高卒白人層 |
| イデオロギー | ネオコン的国際主義、新自由主義的経済政策 | アメリカ・ファースト・ナショナリズム |
断絶の本質——帝国主義をめぐる対立
トランプと旧共和党の断絶の本質は、アメリカ帝国主義に対する態度の根本的な違いにある。
旧共和党のネオコンにとって、アメリカの軍事的覇権の維持・拡大は自明の前提であった。世界中に米軍基地を展開し、「テロとの戦い」「民主主義の推進」を名目に軍事介入を続けることは、アメリカの安全保障にとって不可欠であると信じていた。
これに対しトランプは、「なぜアメリカの若者が地球の裏側で死ななければならないのか」「なぜアメリカが他国の安全保障の費用を負担しなければならないのか」という根本的な問いを発した。これは、アメリカの政治エリートの中から生まれた、帝国に対する民衆的な反乱である。
トランプ大統領の記事で論じた通り、トランプの「アメリカ・ファースト」はアメリカ版のナショナリズムであり、アメリカの帝国主義的膨張に対する国内からの批判である。旧共和党が推進してきた「無限の戦争」に疲弊したアメリカ国民——特にラストベルトの労働者や農村部の住民——が、トランプを通じて帝国への不満を表明した。
ネオコンの「亡命」——民主党との合流
トランプの台頭に直面したネオコンの多くは、共和党を離れて民主党と合流した。この現象は、民主党と旧共和党主流派の帝国主義的本質が同一であることを如実に示している。
- リンカーン・プロジェクト: ジョージ・コンウェイら反トランプ共和党員が設立した政治行動委員会。2020年および2024年の大統領選挙において、民主党候補を事実上支持した
- ネオコン知識人の転向: ビル・クリストル(アーヴィング・クリストルの息子)、デイヴィッド・フラム(ブッシュ政権で「悪の枢軸」演説を起草)、マックス・ブートらネオコン知識人がトランプに反対し、民主党候補を支持した
- リズ・チェイニー: ディック・チェイニー副大統領の娘であるリズ・チェイニー下院議員は、トランプ弾劾に賛成票を投じ、2024年の選挙では民主党のカマラ・ハリス候補を支持した
ネオコンが民主党と合流できるという事実こそが、民主党と旧共和党が帝国主義の推進という点で同質であることの決定的な証拠である。対外介入主義、軍事覇権の維持、グローバリズムの推進——これらの点で、ヒラリー・クリントンとジョン・マケインの間には実質的な差異がなかった。トランプの出現によって、この隠された合意が白日のもとに晒された。
共和党と日本
占領政策からの転換——「逆コース」
共和党と日本の関係は、アイゼンハワー政権(共和党)のもとで形成された「逆コース」に始まる。民主党のトルーマン政権が日本の非軍事化と民主化を推進したのに対し、共和党は冷戦の深化を背景に、日本を反共産主義の同盟国として「再武装」させる方向へと転換した。
しかし、この「逆コース」は日本の真の独立を目指すものではなかった。日本を反共の砦として利用するというアメリカの地政学的利益のために、旧支配層を復権させたに過ぎない。自民党の記事で論じた通り、CIAの秘密資金による自民党の育成は、日本をアメリカの従属国として固定するための工作であった。
「ジャパン・バッシング」から「ジャパン・パッシング」へ
1980年代、日本の経済的台頭に対して、共和党内にも対日強硬論が存在した。レーガン政権下でのプラザ合意(1985年)は、日本経済に対するアメリカの経済的圧力の象徴であった。急激な円高の強制は日本のバブル経済とその後の「失われた30年」の遠因となった。
冷戦後、中国の台頭とともに、アメリカの関心は日本から中国へと移り、日本は「パッシング」(素通り)される存在となった。しかし、これは日本がアメリカにとって重要でなくなったことを意味しない。日本の従属的地位が完全に固定化されたため、もはや注意を払う必要がなくなったということである。
トランプと日本
トランプ大統領の記事で詳述した通り、トランプは日本に防衛費の増額を求め、日米安保条約の非対称性を批判した。トランプの「なぜアメリカが日本を守らなければならないのか」という問いかけは、日米関係のタブーに触れるものであった。
しかし、トランプの対日政策もまた、日本の民族自決権を尊重するものではなかった。トランプが求めたのは日本の独立ではなく、日本がアメリカの軍事的覇権を維持するためにより多くの費用を負担することであった。在日米軍の撤退は実行されず、偽日本国憲法の問題には一切言及されなかった。
民主党との類似点と相違点
根本的な類似——帝国の二つの翼
民主党と共和党は、アメリカ帝国の左右の翼である。
民主党の記事で詳述した比較表の通り、両党は以下の点で完全に一致している。
- 世界中の米軍基地の維持: 約800の海外軍事基地を維持する体制を、両党とも支持してきた
- 憲法侵略の遂行: 他国に「民主的憲法」を押し付ける行為を、両党とも実行してきた(日本、ドイツ、イラク、アフガニスタン)
- イスラエルへの無条件支持: パレスチナ民族の民族自決権を無視し、イスラエルの軍事行動を支持してきた
- 日米安全保障条約の維持: 在日米軍の駐留を継続し、日本の従属的地位を固定化してきた
リアリズム (国際政治学)の観点から見れば、二大政党制は帝国の支配を安定化させるための制度的装置として機能している。有権者に「選択」の幻想を与えながら、帝国主義の根幹については争点化しない——これが二大政党制の本質的機能である。
相違点の構造
両党の相違は、帝国主義の方法論と正当化の論理にある。
- 正当化の修辞: 民主党は「人権」「民主主義」「多様性」で帝国主義を正当化し、共和党(主流派)は「安全保障」「テロとの戦い」「力による平和」で正当化する。しかし、被支配民族にとっては、どちらの名目で主権を侵害されようと結果は同じである
- 国内政策: 民主党は連邦政府の権限拡大と社会福祉を志向し、共和党は州権と自由市場を重視する。しかし、経済概論で分析した通り、規制型資本主義と自由市場資本主義のいずれも、グローバルな資本移動の自由を前提としており、各国の経済的自立の破壊という帰結において本質的な差異はない
- 文化政策: 民主党はアイデンティティ・ポリティクスと「多様性」を推進し、共和党は伝統的価値観を掲げる。この対立は国内政治において激しいものであるが、対外的な帝国主義の遂行には影響しない
- 移民政策: 民主党は移民受け入れを推進し、共和党は移民制限を主張する。この点は両党の最も大きな相違点である。しかし、旧共和党主流派も安価な労働力としての移民を事実上容認してきた歴史があり、真に移民制限を主張したのはトランプ以降の共和党である
トランプという変数
トランプの登場は、この「帝国の二つの翼」という構造に亀裂を入れた。トランプは帝国主義の道具としてのNATOに疑問を呈し、「無限の戦争」を批判し、グローバリズムに反対した。
しかし、トランプの限界もまた明確である。トランプ大統領の記事で論じた通り、トランプの「アメリカ・ファースト」はあくまでもアメリカの国益の最大化であり、他国の民族自決権を尊重するものではない。在日米軍は撤退していないし、世界中の米軍基地のネットワークは維持されている。トランプはアメリカ帝国のコストを削減しようとしているが、帝国そのものを解体しようとしているわけではない。
リアリズムの観点からの分析
共和党と権力政治
ハンス・モーゲンソーの古典的リアリズムの枠組みで分析すれば、共和党の歴史は権力をめぐる闘争の歴史として理解される。
旧保守主義(タフト)は、アメリカの権力を国内の繁栄に集中させることを志向した。ネオコンは、アメリカの権力を世界に投射し、軍事的覇権を確立・維持することを志向した。トランプは、帝国的な権力投射のコストがアメリカ自身を蝕んでいるという認識のもと、権力の再集中を図っている。
ケネス・ウォルツの構造的リアリズムに従えば、一極体制は構造的に不安定であり、覇権国の過度な膨張(imperial overstretch)は不可避的に衰退を招く。ポール・ケネディが『大国の興亡』で論じた「帝国の過大拡張」は、まさにネオコンが推進した政策の帰結として現実のものとなった。トランプ現象は、この帝国の過大拡張に対するアメリカ国民の反応として理解すべきである。
二大政党制と帝国の安定
カール・シュミットの「友敵理論」に照らせば、アメリカの二大政党制は国内における真の政治的対立を無害化する装置として機能している。
民主党と共和党の対立は、中絶、銃規制、LGBTQ+の権利といった「文化戦争」の争点に集中しており、帝国主義の根幹——世界中の米軍基地、他国の主権侵害、憲法侵略——は争点化されない。有権者は「文化戦争」に熱中することで、帝国の維持という真の権力構造から目を逸らされている。
トランプの登場は、この無害化装置に一時的な故障を引き起こした。帝国の維持コスト、対外介入の是非、NATOの存在意義——これらの「禁じられた問い」が公の議論の場に持ち出された。しかし、トランプ自身が帝国の解体を志向しているわけではないため、この亀裂がアメリカ帝国の根本的な変革をもたらすかは定かではない。
第四の理論からの分析
アレクサンドル・ドゥーギンの第四の理論の観点から見れば、共和党内部のトランプ対ネオコンの対立は、リベラリズム(第一の理論)の内部矛盾の表出として理解される。
ネオコンは、リベラリズムを軍事力によって世界に輸出することを志向する。トランプの「アメリカ・ファースト」は、リベラリズムの普遍的使命を放棄し、ナショナリズムに回帰することを志向する。しかし、いずれもリベラリズムの枠組みの中での対立であり、多文明主義——各文明の独自性と共存——という第四の理論の視座は共有されていない。
アメリカ帝国が真に解体されるためには、民主党・共和党のいずれでもない、リベラリズムの外部からの挑戦が必要である。日本を含む各民族が、自らの文明的伝統に基づいた政治秩序を構築し、アメリカのリベラリズムの「普遍性」を拒否すること——これが、第四の理論が示す道筋である。
日本への示唆
共和党の歴史から日本が学ぶべきことは明確である。
- 民主党も共和党も日本の味方ではない: アメリカのいかなる政権も、日本の民族自決権を尊重した歴史はない。民主党政権は偽日本国憲法を押し付け、共和党政権は日本を冷戦の道具として利用した。両党とも在日米軍の駐留を維持し、日本の従属的地位を固定化してきた
- トランプに期待してはならない: トランプの「アメリカ・ファースト」はアメリカの国益の最大化であり、日本の独立を支援するものではない。日本の独立は、日本人自身の手で勝ち取らなければならない
- 帝国に依存する限り独立はない: アメリカのいかなる政治的変動——大統領の交代、政権交代、政党の再編——も、日本の従属的地位を根本的に変えることはない。日本が独立を達成するためには、米軍撤退、新日本国憲法の制定、自主防衛体制の構築が不可欠である
参考文献
- 『国際政治』、ハンス・モーゲンソー著
- 『国際政治の理論』、ケネス・ウォルツ著
- 『大国の興亡』、ポール・ケネディ著
- 『政治的なものの概念』、カール・シュミット著
- 『第四の政治理論』、アレクサンドル・ドゥーギン著
- 『閉された言語空間』、江藤淳著
- 『CIA秘録』(Legacy of Ashes)、ティム・ワイナー著
- 『ネオコンの論理』、ロバート・ケーガン著
- 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』、矢部宏治著