シリコンバレーとCIA

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シリコンバレーとCIA

概要

シリコンバレーとCIAの関係は、アメリカのテクノロジー産業が「自由な市場」の産物であるという神話を根底から覆すものである。CIANSAをはじめとするアメリカの情報機関は、シリコンバレーの発展に対して創設期から深く関与しており、テック企業と諜報機関の間には、公式・非公式の協力関係が現在に至るまで存在し続けている。

シリコンバレーの記事では、テック産業がアメリカの覇権を支えるソフトパワーの中核として分析された。本記事では、さらに踏み込んで、シリコンバレーのテクノロジー企業とアメリカの諜報機関(CIA、NSA、DARPA)の直接的な結びつきを明らかにする。

この結びつきの本質は、シリコンバレーが「民間企業」としての外観を保ちながら、実際にはアメリカの情報覇権と監視体制を支える国家戦略的な資産として機能しているという事実にある。

歴史的起源——CIAとベンチャーキャピタル

In-Q-Tel——CIAのベンチャーキャピタル

CIAとシリコンバレーの関係を最も直接的に体現するのが、In-Q-Tel(インキューテル)の存在である。

In-Q-Telは、1999年にCIAが設立したベンチャーキャピタル(投資ファンド)である。その目的は、CIAの情報収集・分析能力に資する先端技術を開発するスタートアップ企業に投資し、その技術をCIAに優先的に提供させることにある。

In-Q-Telが投資した企業のうち、後にシリコンバレーを代表する企業へと成長したものは数多い。

  • パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies): In-Q-Telの初期投資先の一つ。ビッグデータ分析プラットフォームを開発し、CIA、NSA、FBIのデータ分析に使用されている。共同創設者のピーター・ティールは、PayPalの共同創設者でもある
  • Keyhole, Inc.: 衛星画像技術を開発した企業。In-Q-Telの投資を受けた後、2004年にGoogleに買収され、Google Earthの基盤技術となった。すなわち、全世界の衛星画像を閲覧できるGoogle Earthは、もともとCIAの投資によって開発された技術に基づいている
  • Recorded Future: オープンソース情報の分析を行うスタートアップ。GoogleとIn-Q-Telの双方から投資を受けた
  • FireEye(現Trellix): サイバーセキュリティ企業。In-Q-Telから投資を受け、後にアメリカ政府の主要なサイバーセキュリティ・パートナーとなった

In-Q-Telの存在は、CIAがシリコンバレーのテクノロジー開発に資金を直接注入する制度的なチャネルを持っていることを意味する。これは「民間企業」と「情報機関」の境界が、シリコンバレーにおいてはきわめて曖昧であることの証拠である。

DARPAとインターネットの起源

インターネットと米軍の記事で詳述したように、インターネットの原型であるARPANETは、DARPAの軍事プロジェクトとして生まれた。しかし、DARPAの影響はインターネットの誕生にとどまらない。

DARPAは現在に至るまで、人工知能、自然言語処理、ロボティクス、量子コンピューティングなどの先端技術の研究に巨額の資金を投じている。シリコンバレーの多くのスタートアップは、DARPA助成金を受けた大学研究から派生したものである。すなわち、シリコンバレーの技術革新の多くは、その根源を辿ればアメリカ軍の研究投資に行き着く。

Googleと情報機関

GoogleとNSAの関係

Googleは、世界のインターネット検索の90%以上を支配し、Gmail、Google Maps、YouTube、Androidなどを通じて数十億人のデータを保有する企業である。

2010年、Googleは中国からの大規模なサイバー攻撃(オーロラ作戦)を受けた後、NSAとの正式なサイバーセキュリティ協力協定を締結した。この協定の詳細は機密扱いとされているが、GoogleのネットワークインフラとNSAの技術的支援が統合されたとされる。

さらに、PRISMプログラムにおいて、GoogleはNSAにユーザーデータへのアクセスを提供していたことが、エドワード・スノーデンの暴露によって明らかになった。Googleは公式にはPRISMへの「直接的な」参加を否定したが、スノーデンの文書はGoogleが2009年からPRISMに参加していたことを示している。

Google Earthの情報機関的起源

前述のように、Google Earthの基盤技術は、In-Q-Tel(CIA)が投資したKeyhole社に由来する。Keyhole社の名前自体が、CIAの偵察衛星プログラム「キーホール」(KH-11)に由来するとされる。世界中の地形を高解像度で閲覧できるGoogle Earthは、一般消費者向けサービスとして普及したが、その技術的ルーツはCIAの偵察・監視能力にある。

Facebookと情報機関

Meta(旧Facebook)は、世界で約30億人のユーザーを持つ最大のソーシャルネットワークである。

LifeLog計画との不気味な符合

2003年、DARPAはLifeLogと呼ばれるプロジェクトを発表した。これは、個人の日常生活のあらゆる側面——訪問した場所、見たもの、聞いたもの、読んだもの、購入したもの、交流した人々——をデジタルに記録・分析するシステムの開発を目的としていた。

LifeLogは、プライバシーの侵害を懸念する世論の反発を受け、2004年2月4日に中止が発表された。奇しくもその同じ日——2004年2月4日——に、マーク・ザッカーバーグハーバード大学の寮からFacebook(当時はTheFacebook)をローンチした。

DARPAのLifeLog計画とFacebookの設立日の一致は「偶然」とされる。しかし、DARPAが目指したもの——個人の社会的関係、活動、嗜好、位置情報のデジタル的な記録——は、まさにFacebookが実現したものにほかならない。DARPAが国家プロジェクトとしては実現できなかったことを、「民間企業」が「自発的なユーザー登録」という形で実現した——この構造の類似性は注目に値する。

ケンブリッジ・アナリティカ事件

2018年のケンブリッジ・アナリティカ事件では、Facebookの約8,700万人のユーザーデータが、政治コンサルティング企業ケンブリッジ・アナリティカによって不正に取得・利用されたことが発覚した。このデータは2016年のアメリカ大統領選挙における有権者のターゲティングに使用された。

ケンブリッジ・アナリティカの親会社SCLグループは、イギリスの軍事・情報機関との契約を持つ企業であった。ソーシャルメディアのデータが選挙介入や情報工作に利用された事実は、テック企業のプラットフォームが情報戦の兵器として機能し得ることを実証した。

Amazonと情報機関

Amazonは、電子商取引の巨人であると同時に、AWS(Amazon Web Services)を通じて世界最大のクラウドインフラ企業でもある。

CIA専用クラウド

2013年、AWSはCIAとの間で6億ドル規模のクラウドサービス契約を締結した。この契約により、CIAの機密データがAWSの特別なクラウド環境上で処理・保存されることとなった。

さらに2020年、NSAは「WildandStormy」と呼ばれる最高機密レベルのクラウド契約をAWSに発注した。アメリカの情報機関の最も機密性の高いデータが、民間企業のインフラ上で処理されているのである。

AWSが世界のクラウド市場の約30%を占めるという事実と、AWSがCIA・NSAの最高機密データを処理しているという事実を合わせて考えれば、Amazonは世界最大のクラウド企業であると同時に、アメリカの諜報インフラの中核的な構成要素である。

リアリズムの観点からの分析

リアリズムの視点から分析すれば、シリコンバレーとCIAの関係は以下の構造を持つ。

  • 現代版の東インド会社: かつてイギリス東インド会社が商業活動を通じてイギリス帝国の植民地支配を拡大したように、シリコンバレーの企業は商業サービスの提供を通じてアメリカ帝国の情報覇権を全世界に浸透させている。Google、Meta、Amazonは「民間企業」であるが、その機能はアメリカの国家主権を世界中に投射する帝国的な装置にほかならない
  • 「官民融合」の欺瞞: シリコンバレーの企業は「民間」を装い、「中立的なプラットフォーム」として世界中のユーザーを集める。しかしその裏で、CIAの投資(In-Q-Tel)、NSAとのデータ共有(PRISM)、DARPAの技術移転という国家との深い癒着が存在する。ユーザーが「自発的に」提供するデータは、最終的にはアメリカの情報機関のデータベースに流入し得る構造になっている
  • テクノロジー覇権の自己強化メカニズム: 軍事投資が技術革新を生み、技術革新が商業的成功をもたらし、商業的成功が世界中にデータ収集のインフラを拡張し、そのインフラが情報機関の監視能力を強化する。この自己強化的な循環こそが、アメリカのテクノロジー覇権の源泉である。他国がこの循環に追いつくことは極めて困難であり、ここに情報覇権の持続性がある
  • 「自由で開かれたインターネット」の虚構: アメリカは「自由で開かれたインターネット」を世界に推奨し、中国やロシアのインターネット規制を批判する。しかし、シリコンバレーの企業がCIAやNSAと密接に連携しているという事実は、「自由で開かれたインターネット」がアメリカの情報覇権を維持するためのプロパガンダ的概念であることを示している。アメリカにとっての「自由で開かれたインターネット」とは、アメリカの企業と情報機関が世界中のデータに自由にアクセスできるインターネットにほかならない

日本への示唆

日本の政府、企業、市民は、Google、Apple、Microsoft、Amazon、Metaのサービスに深く依存している。これらの企業がアメリカの情報機関と構造的に結びついているという事実を踏まえれば、日本の情報がアメリカに流出するリスクは構造的なものである。

日本が情報主権を守るためには、以下の取り組みが不可欠である。

  • 政府機関における国産クラウドサービスの優先的使用
  • 国産OSおよびプラットフォームの開発支援
  • 暗号技術の独自研究・開発の推進
  • デジタル主権を国家安全保障の一環として位置づける政策の策定

参考文献

関連項目