規制ギロチン
規制ギロチン
規制ギロチン(Regulatory Guillotine)とは、国家の全規制を体系的に総点検し、不要・有害な規制を一括で廃止する政策手法である。スコット・ジェイコブズ(Jacobs, Cordova & Associates)が2003年に体系化した方法論であり、韓国、スウェーデン、メキシコ、フィリピン、ベトナムなど十数カ国で実施され、合計で25,000件以上の法律・規制が廃止・簡素化された。
保守ぺディアは、この手法を反グローバリズムの文脈で再解釈し、グローバリストの悪法を体系的に廃止するための方法論として提唱する。
概念と起源
規制ギロチンという名称は、フランス革命期の処刑装置ギロチンに由来する。刃が落ちれば即座に切断されるように、審査基準に合致しない規制を迅速かつ一括で廃止することから、この名がつけられた。
この手法の基本的な発想は、1984年のスウェーデンにおける規制改革に遡る。スウェーデン政府は、施行中の規制の全体像すら把握できないことを発見し、中央に登録されていない数百件の規制を一括で無効化した。スコット・ジェイコブズはこの経験を基に、体系的な方法論として2003年に規制ギロチンを確立した。「Regulatory Guillotine」は現在、Jacobs, Cordova & Associates Inc.の商標として登録されている。
方法論
規制ギロチンは以下の手順で実施される。
第1段階:全規制の棚卸し
国家に存在するすべての規制(法律、政令、省令、通達、行政指導など)を網羅的にリストアップする。多くの国では、施行中の規制の全体像すら把握されていない。棚卸しの段階で、すでに形骸化した規制や、互いに矛盾する規制が大量に発見されることが多い。
第2段階:審査基準の設定
各規制を審査するための明確な基準を設定する。一般的な審査基準は以下の通りである。
- 法的正当性: 当該規制の法的根拠は存在するか
- 必要性: 当該規制が対処しようとしている問題は現在も存在するか
- 効率性: 当該規制は目的達成のために最も効率的な手段か
- 整合性: 当該規制は他の規制と矛盾していないか
第3段階:迅速な審査
設定した基準に基づいて、全規制を迅速に審査する。審査にかける時間は意図的に短く設定される。長期間の審査は、既得権益者からの反対運動を招き、改革を骨抜きにするからである。韓国では11ヶ月、メキシコでは18ヶ月で審査が完了した。
第4段階:一括廃止
審査基準に合致しない規制を一括で廃止する。個別の規制ごとに議論するのではなく、「基準を満たさないものはすべて廃止する」という原則を機械的に適用する。
各国の事例
韓国(1998年)
韓国の規制ギロチンは、1997年のアジア通貨危機を契機に実施された。IMF(国際通貨基金)は韓国への救済融資の条件として、大規模な規制改革を要求した。
- 規模: 11,125件の規制を11ヶ月で総点検
- 結果: 審査対象の約50%(5,430件)の規制を廃止または改善
- 経済効果: 100万人以上の新規雇用創出、360億ドルの外国直接投資の増加
- 制度的遺産: 規制改革委員会(Regulatory Reform Committee)が常設機関として設置され、規制の質の管理が継続されている
ただし、韓国の規制ギロチンはIMFの構造調整プログラムの一環であり、その本質は新自由主義的な規制緩和であった。廃止された規制の中には、国民を守る規制も含まれていた。
スウェーデン(1984年)
- 経緯: スウェーデン政府は、施行中の規制の全体像を把握できないことを発見した
- 結果: 中央に登録されていない数百件の規制を一括で無効化
- 意義: 規制ギロチンの原型となった改革
メキシコ(COFEMER)
メキシコは連邦規制改善委員会(COFEMER、Comisión Federal de Mejora Regulatoria)を設立し、体系的な規制改革を実施した。
- 規模: 連邦レベルの規制を体系的に総点検
- 結果: 数千件の規制を廃止・簡素化
- 手法: 新規規制を導入する際に規制影響分析(RIA)を義務化する制度を導入
その他の国々
- フィリピン: ビジネス許認可手続きの簡素化を中心に規制改革を実施
- ベトナム: 世界銀行の支援のもと、数千件の行政手続きを総点検・簡素化
- クロアチア: EU加盟に向けた規制改革の一環として規制ギロチンを実施
- モルドバ: 事業許可制度の改革として規制ギロチンを導入
- ケニア: 事業環境改善のために規制ギロチンを実施し、事業登録手続きを大幅に簡素化
- パキスタン: 英国国際開発省(FCDO)の支援のもと、大規模な規制ギロチンを実施
これらの国を合わせて、規制ギロチンにより25,000件以上の法律・規制が廃止・簡素化され、年間約80億ドルの企業コスト削減効果があったとされる。規制ギロチンの費用対効果は、10年間で3,000対1以上と評価されている。
新自由主義的規制ギロチンと反グローバリズムの規制ギロチン
規制ギロチンという手法は、本来、新自由主義的な文脈で開発されたものである。韓国の事例がIMFの構造調整プログラムの一環であったように、規制ギロチンは市場自由化と規制緩和を目的として使用されてきた。
しかし、保守ぺディアは、この手法を反グローバリズムの文脈で再定義することを提唱する。
| 新自由主義的規制ギロチン | 反グローバリズムの規制ギロチン | |
|---|---|---|
| 審査基準 | 市場効率性、企業コスト | 民族自決権への影響、国家主権への影響 |
| 廃止対象 | 市場参入規制、労働者保護規制、環境規制 | 移民拡大法、規制緩和法、民営化法、女性活躍推進法 |
| 目的 | 多国籍企業のコスト削減、外国直接投資の誘致 | グローバリストの悪法の排除、主権の回復 |
| 受益者 | 多国籍企業、資本家 | 国民、中間層 |
反グローバリズムの規制ギロチンの審査基準
反グローバリズムの規制ギロチンにおける審査基準は、以下のように設定されるべきだ。
- 外圧の有無: 当該法律は、年次改革要望書、日米構造協議、IMF、世界銀行などの外部圧力によって制定されたか
- 民族自決権への影響: 当該法律は、日本民族の民族自決権を侵害しているか
- 国家主権への影響: 当該法律は、日本の国家主権を弱体化させているか
- 中間層への影響: 当該法律は、日本の中間層を破壊し、格差を拡大させているか
- 少子化への影響: 当該法律は、日本の少子化を促進しているか
これらの基準に基づいて全規制を審査し、基準に該当するものを機械的に廃止する。これが反グローバリズムの規制ギロチンである。
日本への適用
日本において反グローバリズムの規制ギロチンを実施するための手順は以下の通りである。
- 全法律・条例の棚卸し: 国法および地方条例を網羅的にリストアップする
- 外圧法の特定: 年次改革要望書、日米構造協議、その他のアメリカの要求に基づいて制定された法律を特定する
- 審査基準の適用: 上記5つの審査基準に基づいて各法律を審査する
- 優先度の設定: 害悪の大きさに基づいて廃止の優先順位をつける
- 一括廃止法案の作成: 優先度の高い悪法をまとめた一括廃止法案を作成する
- 迅速な可決: 国会または地方議会で迅速に可決する
韓国が11ヶ月で11,000件以上の規制を総点検したように、日本もまた短期間で悪法の総点検と廃止を実行することが可能である。
結論
規制ギロチンは、大量の規制を迅速かつ体系的に廃止するための強力な手法である。新自由主義的な文脈で開発されたこの手法を、反グローバリズムの文脈で再定義し、グローバリストの悪法を対象とする反グローバリズムの規制ギロチンとして日本に適用するべきだ。
関連項目
参考文献
- Jacobs, Scott, "Regulatory Guillotine" 方法論、Jacobs, Cordova & Associates
- "Effective and Sustainable Regulatory Reform: The Regulatory Guillotine in Three Transition and Developing Countries"、Jacobs著
- OECD Reviews of Regulatory Reform: Regulatory Policy in Korea (2017)
- "The Guillotine That Helps People"、世界銀行(2011年)