帝国主義の逆説——アングロサクソンとフランスの憲法闘争の敗北

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帝国主義の逆説——アングロサクソンとフランスの憲法闘争の敗北

概要

憲法闘争において、敗者とは外国軍に占領されて憲法を押し付けられた民族だけを指すのではない。自ら帝国主義を遂行した民族が、その理論的代償として自らの民族闘争に敗北する——これが帝国主義の逆説である。

アングロサクソン民族とフランス民族は、近代帝国主義の主要な担い手であった。大英帝国は世界最大の植民地帝国を築き、フランスはアフリカ・インドシナに広大な植民地を支配した。アメリカは「明白なる天命」を掲げて大陸を征服し、その後世界規模の覇権を確立した。

しかし今日、これらの帝国主義民族は、自国において民族自決権を喪失しつつある。フランスは政治的に独立しているにもかかわらず、憲法闘争に敗北した。イギリスとアメリカは、自ら構築した普遍主義イデオロギーによって民族的基盤を解体されつつある。

その根本原因は、民族主義の一貫性を維持できなかったことにある。帝国主義を正当化するために「普遍的価値」を掲げた瞬間、自民族の特殊性を守る論理的基盤は崩壊した。帝国主義は、被支配民族だけでなく、支配民族自身をも破壊する。

フランス——独立していながら憲法闘争に敗北した民族

ド・ゴールの遺産と現在のフランス

フランス第五共和国憲法は、ド・ゴールがフランスの主権を守るために制定した、民族主義憲法の模範であった。ド・ゴールはNATO軍事機構から脱退し、独自の核戦力を構築し、アメリカ軍基地の設置を拒否した。フランスは日本とは異なり、アメリカ軍に占領されておらず、憲法を押し付けられてもいない。

にもかかわらず、フランスは憲法闘争に敗北しつつある。

2024年時点で、フランスの人口の約10%がイスラム教徒であり、パリ近郊のバンリュー(郊外団地)は事実上フランス国家の統治が及ばない地域となっている。エリック・ゼムールが「大置換」(Le Grand Remplacement)と呼んだ人口構成の変容は、フランス民族が自国の中で少数派へと転落する過程を示している。

フランスは外国軍に占領されていない。憲法侵略を受けてもいない。それにもかかわらず、フランス民族は自らの国家における民族的支配を失いつつある。ドナルド・ホロウィッツ憲法闘争の枠組みに照らせば、フランスは自力で憲法闘争に敗北した民族である。

フランサフリックの理論的代償

フランスの憲法闘争の敗北は、アフリカ植民地支配の理論的代償として構造的に説明できる。

フランスは「フランサフリック」と呼ばれるアフリカへの新植民地主義的な支配構造を戦後も維持した。CFAフラン(アフリカ金融共同体フラン)を通じた通貨支配、軍事介入、政権への影響力行使——フランスはアフリカ諸国の民族自決権を侵害し続けた。

しかし、アフリカを支配するためにフランスが用いた論理が、フランス自身を内側から破壊した。

  • 「文明化の使命」の逆流: フランスは植民地支配を「文明化の使命」(mission civilisatrice)として正当化した。「遅れた」アフリカ人を「フランス文明」に教化するという論理は、裏を返せば、フランス文明を受け入れた者は「フランス人」になれるという含意を持つ。この普遍主義的論理が、旧植民地からの移民受け入れの理論的基盤となった
  • 市民権の拡大: 1946年のフランス連合の成立により、植民地住民にフランス市民権が付与された。帝国臣民を「フランス市民」とする政策は、帝国の論理的帰結であった。植民地を領有しながら、その住民を永久に排除することは、フランスが掲げた「自由・平等・友愛」の原則と矛盾するからである
  • フランス語圏の呪い: フランスはアフリカにフランス語を強制した。これにより、フランス語を母語とする数億人のアフリカ人が生まれ、フランスへの移住における言語的障壁が消滅した。文化的帝国主義の道具であったフランス語が、人口侵略の通路となった

フランサフリックとは、アフリカを搾取する仕組みであったが、同時にフランス自身の民族的同質性を破壊する回路でもあった。帝国がその臣民を「文明化」した瞬間、帝国の中心への移動を止める論理的根拠は消滅する。

ライシテの限界

フランスは「ライシテ」(世俗主義)を武器に同化を強制しようとしたが、これは失敗した。

ホロウィッツが実証的に示した通り、民族は統合も同化もしない。フランスの普遍主義は「すべての人間はフランス人になれる」という前提に立つが、これは現実の前に崩壊する。バンリューのイスラム教徒コミュニティは、フランス共和国の「同化」を拒否し、独自の社会規範と法秩序(事実上のシャリーア)を維持している。

フランスは「普遍主義」を建前として掲げながら、実際には「フランス文明への同化」を要求するという矛盾を抱えている。この矛盾は解消不可能である。普遍主義を掲げれば移民を排除できず、同化を要求すれば普遍主義と矛盾する。

アングロサクソン——帝国が自らを食い尽くす

大英帝国と「白人の重荷」

大英帝国もまた、フランスと同じ理論的陥穽にはまった。

ラドヤード・キップリングの「白人の重荷」に象徴される「文明化の使命」は、植民地支配を道徳的に正当化する装置であった。しかし、第二次世界大戦後、この論理は逆転した。「文明化された」旧植民地の臣民が「母国」への移住権を主張し始めたのである。

1948年の英国国籍法は、英連邦市民にイギリスへの入国・居住権を認めた。これは帝国の論理的帰結であった——植民地の臣民を「英国臣民」と定義した以上、彼らの入国を拒否することは自己矛盾となる。エンパイア・ウィンドラッシュ号(1948年)に乗ってカリブ海から到着した移民は、大英帝国が構築した普遍主義的枠組みの正当な帰結であった。

イーノック・パウエルは1968年の「血の川」演説で、大量移民がイギリス民族の存亡に関わる問題であることを警告した。しかし、パウエルの警告は「レイシズム」として封殺された。なぜか。それは、イギリスが帝国を持った時点で、民族主義を主張する論理的権利を自ら放棄していたからである。世界中の民族を支配しておきながら「イギリスはイギリス人のもの」と主張することは、矛盾以外の何物でもなかった。

アメリカの普遍主義とその帰結

アメリカはさらに徹底した形で普遍主義を内面化した。

アメリカは建国の理念として「すべての人間は平等に創られた」(独立宣言)を掲げた。この理念は、建国時には事実上WASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)の民族国家を意味していたが、その普遍主義的な文言が後に独り歩きを始めた。

公民権運動(1950-60年代)は、アメリカの建国理念を字義通りに適用することを要求した。「すべての人間は平等」と宣言した以上、黒人を排除することは論理的に矛盾する——この主張は、アメリカが自ら掲げた普遍主義の論理的帰結であった。

1965年の移民法改正(ハート=セラー法)は、出身国別の移民割り当てを廃止し、事実上「すべての人種に平等な移民機会」を保障した。この改正は、公民権運動の延長線上にあり、アメリカの普遍主義が人口政策にまで適用された瞬間であった。その結果、アメリカにおける白人の人口比率は1960年の約85%から2020年の約58%にまで低下し、2045年頃には白人が少数派に転落すると予測されている。

アメリカが他国に人口侵略を遂行する帝国であると同時に、自らも人口構成の根本的変容を経験しているという事実は、帝国主義の逆説を最も鮮明に示す事例である。

民族主義の一貫性——なぜ彼らは敗北したのか

帝国主義と普遍主義の不可分性

フランスとアングロサクソンの憲法闘争における敗北の根本原因は、帝国主義と普遍主義の不可分性にある。

帝国主義を遂行するためには、支配を正当化するイデオロギーが必要である。単なる暴力的征服は長期的には維持できない。帝国は、被支配民族に対して「あなた方を文明化する」「普遍的な価値をもたらす」という論理を提示しなければならない。

  • フランス: 「自由・平等・友愛」の普遍主義を掲げてアフリカを支配した
  • イギリス: 「文明化の使命」「法の支配」を掲げてインド・アフリカを支配した
  • アメリカ: 「自由と民主主義」を掲げて世界中に覇権を拡大した

しかし、普遍主義を掲げた瞬間、民族主義は論理的に主張できなくなる

「すべての人間は平等である」と宣言した帝国が、「しかしこの国はこの民族のものである」と主張することは自己矛盾である。普遍主義は帝国の外に向かっては支配の道具として機能するが、帝国の内に向かっては民族的基盤を溶解させる酸として作用する。

イスラエルとの決定的な対比

この逆説を最も鮮明に照らし出すのが、イスラエル基本法との比較である。

ユダヤ教のリアリズムで論じた通り、ユダヤ民族は一度も普遍主義を採用しなかった。ユダヤ教のハラーハーは「誰がユダヤ人か」を厳格に定義し、民族の境界を3000年にわたって維持した。ユダヤ民族は他民族を「文明化」しようとはせず、自民族の存続のみを追求した。

その結果、イスラエルは憲法闘争に完全に勝利した。2018年のユダヤ民族国家基本法は、「イスラエルはユダヤ人の民族的郷土国家である」と明記し、民族自決権をユダヤ民族に排他的に保障している。

フランスとイスラエルの対比は決定的である。

フランス イスラエル
帝国主義 アフリカに植民地帝国を建設 植民地帝国を持たない
イデオロギー 普遍主義(自由・平等・友愛) 民族特殊主義(選ばれた民)
市民権の基準 文化的同化(フランス語・ライシテ) 血統(ハラーハーによる母系定義)
移民政策 旧植民地からの大量移民を受け入れ 帰還法でユダヤ人のみ優先
憲法闘争の結果 敗北(民族的支配の喪失) 勝利(民族的自決権の確立)

帝国を持たなかった民族が憲法闘争に勝利し、帝国を持った民族が敗北する——これが帝国主義の逆説の核心である。

民族主義の一貫性とは何か

民族主義の一貫性とは、自民族の自決権を主張すると同時に、他民族の自決権を侵害しないことである。

帝国主義は、他民族の自決権を侵害する行為である。帝国主義を行った民族は、「民族自決権」という概念を自ら否定したことになる。自ら否定した概念を後から再び主張しようとしても、もはや論理的な正当性を持たない。

フランスがアフリカ人の民族自決権を侵害した時点で、「フランスはフランス人のもの」という主張の論理的基盤は崩壊した。イギリスがインド人やアフリカ人の自決権を侵害した時点で、「イギリスはイギリス人のもの」という主張の論理的基盤は崩壊した。

これが、帝国主義の真の代償である。軍事的敗北よりも深刻な、思想的・論理的な自壊。帝国主義民族は、他民族を支配するために普遍主義を採用し、その普遍主義によって自らの民族的基盤を失う。

リアリズムの観点からの分析

ホロウィッツの枠組みからの分析

ドナルド・ホロウィッツ憲法闘争の枠組みで分析すれば、帝国主義の逆説は以下のように説明される。

憲法闘争はゼロサムゲームであり、マジョリティは民族主義憲法を求め、マイノリティは法の支配を求める。帝国主義民族がアフリカやアジアに進出し、大量の被支配民族を「帝国臣民」として包摂した瞬間、帝国内部の民族構成が変化する。かつてのマジョリティはマイノリティへと転落する可能性に直面し、かつての被支配民族が「法の下の平等」を求めて憲法闘争を開始する。

フランスにおいて、旧植民地出身のイスラム教徒が「フランス共和国の市民」として平等な権利を要求するのは、ホロウィッツが予測する通りの構造である。彼らは「法の下の平等」を求め、フランス民族は「フランスはフランス人のもの」という民族主義を再び主張しようとする。しかし、フランスが自ら構築した普遍主義は、後者の主張を封じる。

カール・シュミットの「政治的なものの概念」

カール・シュミットは、政治の本質を「友と敵の区別」に見出した。帝国主義民族が陥った逆説は、シュミットの枠組みでは「敵を決定する能力の喪失」として理解される。

帝国は、被支配民族を「臣民」として包摂することで、友と敵の境界線を曖昧にする。帝国の内部に取り込まれた旧植民地の民族は、もはや「外部の敵」ではなく「内部の市民」である。彼らを「敵」と名指しすることは、帝国自身が掲げた「普遍的市民権」の否定を意味する。

イーノック・パウエルが「レイシスト」と断罪されたのは、まさにこの構造による。大英帝国が世界中の民族を「英国臣民」として包摂した以上、その臣民を「敵」として排除することは、帝国の自己否定にほかならなかった。

帝国主義の五段階と逆流

帝国主義の記事で論じたN.S.ライオンズの帝国主義の五段階——脱国家化、脱文化化、分割統治、人口侵略、管理・抑圧——は、帝国主義民族に対しても逆流する。

帝国が被支配民族に対して行った脱国家化は、帝国の中心においても進行する。「多文化主義」「多様性」のイデオロギーは、帝国中心部の民族のアイデンティティをも解体する。帝国が植民地に送り込んだ人口侵略は、逆方向の人口侵略として帝国の中心に還流する。帝国主義の五段階は、最終的に帝国自身に適用される。

日本への教訓

帝国主義の逆説は、日本民族に対して二つの教訓を与える。

第一の教訓: 帝国主義を行ってはならない

日本はかつて帝国主義を行い、朝鮮半島・中国大陸・台湾・東南アジアの民族の自決権を侵害した。この歴史的事実を否定することはできない。

しかし、大日本帝国の植民地帝国は軍事的敗北によって解体された。フランスやイギリスのように、旧植民地からの大量移民という「帝国の逆流」は発生していない。日本の帝国主義は短期間で終結したため、フランスのような理論的自壊は——少なくとも帝国主義の直接的帰結としては——まだ生じていない。

これは不幸中の幸いではあるが、日本が現在経験している人口侵略は、帝国主義の逆流ではなく、アメリカによる帝国主義の遂行——すなわち低賃金移民政策の強制——の結果である。

第二の教訓: 民族主義の一貫性を維持しなければならない

フランスとアングロサクソンの敗北が教えるのは、民族主義の一貫性を失った民族は、自国においても憲法闘争に敗北するということである。

日本民族が新日本憲法を制定し、民族自決権を回復するためには、以下の原則を堅持しなければならない。

  • 他民族の自決権を尊重する: 日本民族の自決権を主張するならば、他民族の自決権をも尊重しなければならない。この一貫性なくして、民族主義は正当性を持たない
  • 普遍主義を拒否する: 「すべての人間は平等」といった普遍主義を国家原理として採用してはならない。日本は日本民族の国家であり、この前提は交渉の対象ではない
  • 帝国主義を拒否する: 日本は帝国であってはならない。他国を支配しようとする瞬間、自国の民族的基盤を守る論理は崩壊する

第四の理論が提唱する多文明主義——各文明の独自性と共存——は、まさにこの原則を体現している。帝国主義でも普遍主義でもない、各民族の自決権に基づく国際秩序こそが、民族主義の一貫性を維持できる唯一の枠組みである。

結論

アングロサクソンとフランスは、自ら帝国主義を遂行することで、自らの民族闘争に敗北した。フランスはアメリカ軍に占領されていないにもかかわらず、アフリカ植民地支配の理論的代償として、自国における民族的支配を失いつつある。イギリスとアメリカもまた、普遍主義帝国の逆流によって民族的同質性を失いつつある。

その根本原因は、民族主義の一貫性を維持できなかったことにある。帝国主義を行うために普遍主義を採用し、その普遍主義が自民族の存在基盤を溶解させた。帝国を持たなかったイスラエルが憲法闘争に勝利し、帝国を持ったフランス・イギリス・アメリカが敗北しつつある——この事実が、帝国主義の逆説のすべてを物語っている。

日本民族は、この教訓を深く心に刻まなければならない。

関連項目

参考文献