全米民主主義基金
全米民主主義基金(NED)
概要
全米民主主義基金(National Endowment for Democracy: NED)は、1983年にロナルド・レーガン大統領の主導により設立された、アメリカの対外政治工作機関である。形式上は501(c)(3)の民間非営利組織であるが、予算のほぼ全額をアメリカ議会の歳出から受けており、2023年度の歳出は3億1,500万ドルに達する。
NEDの共同創設者であり元代行会長のアレン・ワインスタインは、1991年のワシントン・ポスト紙のインタビューで、NEDの本質を以下のように端的に表現した。
- 「我々が今日やっていることの多くは、25年前にはCIAが秘密裏にやっていたことだ。最大の違いは、こうした活動を公然と行えば、スキャンダルになる可能性がほぼゼロだということだ。公開性そのものが防御になる」
NEDは、「民主主義の促進」を名目として世界100か国以上でNGO・メディア・市民団体・反政府組織に資金を提供しているが、その活動の実態は、アメリカの地政学的利益に反する政権を不安定化させ、体制転覆を組織的に推進することにある。NEDは、CIAの秘密工作を「公然」の形態に転換した機関であり、USAIDと並ぶアメリカ帝国主義のソフトパワー兵器である。
設立の歴史的経緯
NEDの設立は、CIAの秘密工作が暴露されたことへの制度的な対応策として理解されなければならない。
CIAの秘密資金提供の暴露(1967年)
1967年、アメリカの雑誌ランパーツ(Ramparts)が、CIAが全米学生連合(NSA)に秘密裏に資金を提供し、国際的な学生運動を操作していた事実を暴露した。この報道をきっかけに、CIAが冷戦下で労働組合、文化団体、知識人、メディアに秘密資金を提供していた工作が次々と明るみに出た。
CIAは文化自由会議(Congress for Cultural Freedom)を通じて、世界中の知識人・雑誌・芸術団体に秘密資金を投入し、反共産主義的な世論を形成していた。こうした活動は表面上は「独立した市民社会」の活動であったが、実態はCIAが背後で糸を引く思想工作にほかならなかった。
チャーチ委員会とパイク委員会(1975年)
1975年、チャーチ委員会(上院特別委員会)とパイク委員会(下院特別委員会)がCIAの秘密工作を本格的に調査した。チャーチ委員会は、CIAがイラン(1953年)、グアテマラ(1954年)、コンゴ(1960年)、チリ(1973年)で政権転覆を実行し、カストロ、ルムンバら外国指導者の暗殺を計画していた事実を確認した。
この調査により、CIAの秘密工作は政治的に大きなスキャンダルとなり、従来の方法による対外干渉が困難になった。NEDの設立は、この文脈において、CIAの機能を「合法的」かつ「公然」の形で継続するための制度的装置として構想された。
レーガンの「プロジェクト・デモクラシー」(1982年)
1982年6月8日、レーガン大統領はイギリス議会でのウェストミンスター演説において、世界中で「民主主義のインフラストラクチャー」を構築する構想を発表した。レーガンは「このプログラムは影に隠れることはない。堂々と陽の光の下に立つ」と宣言した。これが「プロジェクト・デモクラシー」と呼ばれるNED設立構想の公的な起点である。
この演説の真意は明白である。「影に隠れない」とは、CIAの秘密工作のように暴露されるリスクがないということだ。「公然」の形で体制転覆を行えば、法的・政治的リスクを回避できる。レーガン政権の戦略家たちは、CIAの失敗から学び、同じ目的をより洗練された手段で達成する方法を編み出した。
アメリカ政治財団の調査とNED法(1983年)
レーガンの構想を受けて、1982年にアメリカ政治財団(American Political Foundation)が「民主主義プログラム」の実現可能性調査を委託された。この調査チームには、後にNEDの共同創設者となるアレン・ワインスタインが参加していた。
注目すべきは、この調査の設計にウォルター・レイモンド・ジュニアが関与していたことである。レイモンドはCIAの秘密工作部門に20年以上勤務したベテランの情報将校であり、1982年から国家安全保障会議(NSC)のスタッフとしてNEDの制度設計を主導した。CIAの情報将校がNEDの設計者であるという事実は、NEDの本質を雄弁に物語っている。
1983年11月22日、議会は全米民主主義基金法(National Endowment for Democracy Act)を可決し、NEDが正式に設立された。初年度の予算は1,800万ドルであった。
組織構造
NEDは、独自の助成金プログラムに加えて、以下の4つの中核機関を通じて資金を世界中に分配している。
4つの中核機関
| 機関名 | 略称 | 母体 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 国際共和研究所 | IRI | 共和党 | 親米保守政党・市民団体の育成、選挙支援 |
| 全米民主研究所 | NDI | 民主党 | 親米リベラル政党・市民社会の育成 |
| 連帯センター | SC | AFL-CIO(アメリカ最大の労働組合連合) | 対象国の労働組合への介入 |
| 国際民間企業センター | CIPE | 全米商工会議所 | 自由市場経済の推進、民営化の促進 |
この4機関の構成は、アメリカの二大政党制(共和党・民主党)、労働界(AFL-CIO)、財界(商工会議所)を包含しており、党派を超えたアメリカの国家的合意に基づく対外干渉体制を形成している。NEDは共和党と民主党が共同で運営する体制転覆機関であり、アメリカの政権交代に関わらず継続的に機能する。
資金配分の構造
NEDの資金配分は以下の3層構造をとる。
- 議会歳出 → NED: アメリカ議会が毎年NEDに予算を配分する(2023年度: 3億1,500万ドル)
- NED → 4中核機関: NEDは予算の約半分を4つの中核機関に配分する
- NED/中核機関 → 現地NGO・メディア・市民団体: 残りの予算はNED自身の助成金プログラムを通じて、世界100か国以上の団体に直接配分される
この多層構造は、資金の最終受益者とアメリカ政府との直接的な繋がりを不透明にし、「独立した市民社会への支援」という体裁を維持するための設計である。
CIAとの関係
NEDがCIAの後継機関であることは、NEDの設立に関わった人物たち自身の証言によって裏付けられている。
ワインスタインの証言
NEDの共同創設者アレン・ワインスタイン(1937-2015年)は、1991年のワシントン・ポスト紙のデイヴィッド・イグネイシアス記者によるインタビューで次のように述べた。
- 「我々が今日やっていることの多くは、25年前にはCIAが秘密裏にやっていたことだ。最大の違いは、こうした活動を公然と行えば、スキャンダルになる可能性がほぼゼロだということだ。公開性そのものが防御になる」
ガーシュマンの証言
NEDの初代会長カール・ガーシュマン(1984-2021年在任)は、1986年に次のように述べた。
- 「世界中の民主主義グループがCIAの資金援助を受けていると見なされるのは恐ろしいことだ。1960年代にそれを経験したからこそ、廃止された」
ガーシュマンの証言は、NEDが設立された理由がCIAの活動そのものを廃止するためではなく、CIAの活動が暴露されるリスクを回避するためであったことを明確に示している。
ウォルター・レイモンドの関与
前述の通り、NEDの制度設計を主導したウォルター・レイモンド・ジュニアはCIAの秘密工作担当官であった。レイモンドは1982年にNSCに異動し、レーガン政権の「公共外交」(public diplomacy)戦略を策定した。「公共外交」とは、CIAのプロパガンダ工作を公然の形態に転換するための婉曲表現にほかならない。
NEDはこの「CIAの活動の自覚的な暴露を回避しつつ同じ目的を追求する」という意味では、CIAの秘密工作を「公然」化したものであり、CIAの活動をより巧妙に継続するための制度的イノベーションである。
USAIDとNEDの関係
NEDとUSAIDの関係は、アメリカの対外干渉体制を理解する上で極めて重要である。両組織は、表面上は独立した組織であるが、目的・対象国・手法・資金源において深く連動している。
共通の目的
NEDとUSAIDはいずれも「民主主義の促進」を公式の使命として掲げている。しかし、両組織の「民主主義促進」とは、実態としてはアメリカの地政学的利益に合致する体制を対象国に構築することを意味する。
- USAID: 「開発援助」「人道支援」を名目とし、政府間の公式チャネルを通じて活動する。年間予算は約230億ドル(2001-2024年平均)と桁違いに大きい
- NED: 「民主主義の促進」を名目とし、NGO・市民団体への直接助成を通じて活動する。年間予算は約3億ドルとUSAIDに比べれば小規模であるが、介入の精度と政治的影響力は極めて高い
分業と連携の構造
NEDとUSAIDは、対象国において以下のような分業体制をとる。
| 機能 | USAID | NED |
|---|---|---|
| 公式の立場 | 政府機関(国務省傘下) | 民間非営利組織(形式上) |
| 主な対象 | 政府・公的機関・大規模NGO | 反政府NGO・メディア・活動家・野党 |
| 活動の性格 | 長期的な「開発援助」・社会インフラ整備 | 短期的・戦略的な政治介入 |
| カラー革命における役割 | 「市民社会」の地盤整備(選挙監視、メディア育成) | 反政府運動への直接的な資金提供・訓練 |
| 可否認性 | 「開発援助」としての説明が可能 | 「民主主義促進」としての説明が可能 |
| 政権転覆への関与 | 間接的(基盤整備) | 直接的(活動家・野党への資金提供) |
この分業により、アメリカは「USAIDは開発援助を行っているだけだ」「NEDは独立した民間団体だ」と主張しつつ、実際には両組織が連携して対象国の体制転覆を推進できる。
同一対象国での同時活動
NEDとUSAIDが同一の対象国で同時に活動し、同一の目的(体制転覆または体制不安定化)に寄与した事例は枚挙にいとまがない。
- ウクライナ(2004年・2014年): USAIDは「民主主義促進」に累計数億ドルを投入し、NEDはウクライナの反政府メディア・NGO・活動家に助成金を提供した。カラー革命のエスカレーションの記事で詳述した通り、ヴィクトリア・ヌーランド国務次官補は、1991年以降にアメリカがウクライナに50億ドル以上を投資したと述べた
- ジョージア(2003年): USAIDは有権者名簿の電子化に150万ドルを支出し、NEDは学生運動クマラ(Kmara)を含む市民団体に資金を提供した
- ベネズエラ: USAIDとNEDは、チャベス政権の打倒を目指す野党勢力に同時に資金を提供した。2002年のクーデター未遂に先立ち、NEDはベネズエラの反政府団体への資金提供を急増させていた
- ロシア: USAIDは1992年から2012年の追放まで約27億ドルをロシアに投入し、NEDはロシアの反政権NGO・メディアに助成金を提供した。2015年、ロシアはNEDを「好ましくない組織」に指定して活動を禁止した
- キューバ: USAIDは秘密のソーシャルメディアネットワーク「ZunZuneo」(キューバ版Twitter)を構築し、NEDはキューバの反体制派に助成金を提供した
USAIDの「移行イニシアチブ局」(OTI)
USAIDの内部組織である移行イニシアチブ局(Office of Transition Initiatives: OTI)は、NEDと最も密接に連携する部門である。OTIは「政治的な移行」を支援する名目で設立されたが、その「移行」とは事実上体制転覆後の親米政権の樹立を意味する。OTIは、ベネズエラ、キューバ、リビア、シリアなどで活動し、NEDが支援する反政府勢力と同一の組織に資金を提供してきた。
各国での活動
以下に、NEDの主要な活動を国別に整理する。
旧ソ連・東欧
- ロシア: 1991年のソ連崩壊後、NEDはロシアの「市民社会」に大量の資金を投入した。選挙監視団体、独立メディア、人権NGOへの助成を通じて、親欧米的な市民社会の構築を図った。2015年7月、ロシアはNEDを「ロシアの安全保障を脅かす好ましくない組織」に指定し、活動を全面的に禁止した。ロシア検察は、NEDが「ロシア国内の政治プロセスに介入している」と認定した
- ウクライナ: NEDは2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命の双方に先立ち、反政府メディア・NGO・学生運動に資金を提供した。2013-2014年のNEDのウクライナへの助成金総額は年間数百万ドルに達した。NED会長のカール・ガーシュマンは2013年、ワシントン・ポスト紙の論説で「ウクライナはプーチンが自ら選んだすべてのものを失う可能性がある最大の賞品だ」と述べ、NEDのウクライナにおける活動の地政学的動機を露呈させた
- ジョージア: 2003年のバラ革命に先立ち、NEDはジョージアの選挙監視団体・メディア・市民団体に助成金を提供した。革命を主導した学生運動クマラは、NEDが資金提供するセルビアのオトポールから直接訓練を受けた
- ベラルーシ: NEDはベラルーシの反ルカシェンコ運動に資金を提供した。2020年の大統領選後の大規模抗議に先立ち、NEDのベラルーシへの助成金は増加していた
中国・香港
NEDは中国本土と香港において、「民主主義促進」の名目で広範な活動を展開してきた。2020年の報告によると、NEDは2019年に中国関連プロジェクトに1,000万ドル以上を投入した。香港の2019-2020年の民主化デモに関連して、中国政府はNEDを含むアメリカの組織が「香港の暴力行為を扇動している」と非難した。
NED傘下のNDI(全米民主研究所)は、1997年の返還以前から香港で活動し、政党の組織化と選挙支援を行ってきた。中国政府は2023年にNEDを「反中国的な分離主義活動を支援する組織」として公式に非難した。
ラテンアメリカ
- ベネズエラ: NEDはチャベス政権以降、ベネズエラの反政府勢力に一貫して資金を提供してきた。2002年のクーデター未遂の直前に、NEDのベネズエラへの助成金が急増していたことが確認されている。チャベスはNEDを「帝国主義の道具」と呼んだ
- ニカラグア: NEDはオルテガ政権に対する野党勢力に資金を提供した。ニカラグア政府はNEDが支援する組織を「外国の利益に奉仕する」として活動を制限した
- キューバ: NEDはキューバの反体制派・独立ジャーナリスト・人権団体に助成金を提供してきた。キューバ政府はNEDを「CIAのフロント組織」と見なしている
- ボリビア: 2019年のモラレス大統領追放劇に先立ち、NEDはボリビアの「市民社会」に資金を提供していた
中東・北アフリカ
- エジプト: 2011年のアラブの春に先立ち、NEDはエジプトの人権団体・選挙監視団体に資金を提供していた。ムバラク政権崩壊後、エジプト政府はNEDを含む外国NGOを「政治的活動」で起訴した
- イラン: 2025年のアメリカ議会公聴会で、NED会長デーモン・ウィルソンは、NEDがイランで約200台のスターリンク衛星通信端末を配備したと証言した。議員がこの発言を遮り「公開の場で議論すべきではない」と述べたことは、NEDの活動がいかに機密性の高い工作を含んでいるかを示している
東南アジア
- ミャンマー(ビルマ): NEDは長年にわたりミャンマーの民主化運動に資金を提供してきた。2021年の軍事クーデター以降、NEDは市民的不服従運動(CDM)への支援を継続している
- カンボジア: NEDはカンボジアの野党・メディアに資金を提供した。カンボジア政府はNEDが支援する組織が「外国の利益に奉仕している」と非難した
メディアと世論操作
NEDの活動において見過ごせない側面が、世界中のメディアへの大規模な資金提供である。2022年、NEDはメディア機関に5,100万ドルの支援を提供した。
NEDは以下のような形態でメディアに資金を投入している。
- 「独立メディア」の育成: 対象国において、政府に批判的な「独立メディア」を創設・運営するための資金を提供する。これらのメディアは形式上は「独立」であるが、資金源がNED(すなわちアメリカ議会の歳出)である以上、アメリカの外交政策に沿った報道を行うのは構造的に不可避である
- ジャーナリストの訓練: 対象国のジャーナリストに対して「調査報道」や「メディア・リテラシー」の訓練を提供する。この訓練は、アメリカの視点に沿った報道フレームワークの内面化を促進する
- SNSプラットフォームの活用: 2025年の議会公聴会でのスターリンク証言が示すように、NEDは通信インフラそのものに介入し、対象国の情報環境を操作する
NEDが資金提供するメディアは、カラー革命のエスカレーションのステージ1〜2において、「市民の英雄的な抵抗」という物語を国際世論に拡散する役割を担う。USAIDも同様にメディアに資金を提供しており(USAIDは2023年に6,200人のジャーナリストを訓練)、NEDとUSAIDはメディア操作においても連携している。
NEDへの批判
NEDに対する批判は、左右双方の立場から、また対象国の政府から提起されている。
保守派からの批判
- ロン・ポール(共和党、元下院議員): ポールは2003年にNED廃止法案を提出し、NEDを「何も残さない(Nothing of Enduring Democracy)」と皮肉った。ポールは、NEDの活動はアメリカの納税者の金で他国の内政に干渉するものであり、非介入主義の原則に反すると主張した
- トゥルシー・ガバード(元民主党、現共和党の国家情報長官): ガバードはNEDの透明性欠如と体制転覆への関与を繰り返し批判した
左派からの批判
- ノーム・チョムスキー: チョムスキーはNEDを「CIAの秘密工作の公然版」と批判し、アメリカが世界中で「民主主義」の名のもとに帝国主義的介入を行う道具であると指摘した
- ウィリアム・ブルム: ブルムは著書『Rogue State』(ならず者国家)でNEDを「トロイの木馬」と表現し、NEDの「民主主義促進」が実際には親米政権の樹立を目的としていることを詳細に論証した
学術的批判
- ウィリアム・ロビンソン: カリフォルニア大学の社会学者ロビンソンは、1996年の著書『Promoting Polyarchy(多頭制の促進)』において、NEDの「民主主義促進」がアメリカに従順なエリート支配体制(polyarchy)を構築するための手段であることを分析した。ロビンソンによれば、NEDの目的は「民主主義」ではなく、「アメリカの覇権に適合する政治体制の構築」である
- ニコラ・ギヨー: フランスの政治学者ギヨーは、2005年の著書『The Democracy Makers(民主主義の製造者)』において、NEDを含む「民主主義促進」産業がアメリカの外交政策と不可分であることを論じた
対象国からの批判
- ロシア: 2015年にNEDを「好ましくない組織」として全面禁止。ロシア政府はNEDが「カラー革命の準備に関与している」と認定した
- 中国: NEDを「反中国的な分離主義を支援する組織」として非難。2023年、中国外務省はNEDに関する報告書を発表し、NEDの世界的な活動を詳細に批判した
- ベネズエラ: チャベス大統領はNEDを「帝国主義の道具」と呼び、NED支援団体への規制を強化した
- ボリビア: モラレス大統領はNEDを含むアメリカの干渉を批判し、USAIDを追放した
- エルサルバドル: ブケレ大統領は2025年にNEDとUSAIDが「野党グループ、政治的な目的を持つNGO、不安定化運動に資金を提供していた」と批判した
リアリズムの観点からの分析
リアリズムの視点から分析すれば、NEDの活動は以下のように整理される。
- CIAの「公然」版: NEDは、チャーチ委員会の暴露後にCIAの秘密工作が政治的に困難になったことへの制度的対応として設立された。ワインスタインの証言が示す通り、NEDの活動はCIAが秘密裏に行っていたことを「公然」の形態で継続するものである。手法は変わっても、目的は同一である
- USAIDとの共犯関係: NEDとUSAIDは、「民間」と「政府」、「政治的介入」と「開発援助」という役割分担を行いながら、対象国の体制転覆という同一の目的に奉仕している。両組織が同一の対象国で同時に活動し、同一のNGO・メディア・活動家に資金を提供している事実は、これが偶然ではなく組織的な連携であることを証明している
- 「民主主義」の武器化: NEDは「民主主義」という概念を、アメリカの覇権に奉仕する政治体制を他国に押し付けるための武器として利用している。NEDが「民主主義」を促進した国々の帰結(ウクライナの戦争、ジョージアの軍事衝突、キルギスの政治的混乱)を見れば、NEDの目的が「民主主義」ではなく、アメリカの地政学的利益の追求であることは明白である
- 国家主権の侵害: NEDの活動は、ウェストファリア体制に基づく内政不干渉原則を根底から破壊する。一国(アメリカ)が他国のNGO・メディア・野党に組織的に資金を提供し、政権交代を促進することは、対象国の民族自決権に対する重大な侵害にほかならない
参考文献
- ウィリアム・ブルム著『Rogue State: A Guide to the World's Only Superpower』(2005年)— NEDを「トロイの木馬」として分析
- ウィリアム・ロビンソン著『Promoting Polyarchy: Globalization, US Intervention and Hegemony』(1996年)— NEDの「多頭制の促進」を学術的に分析
- ニコラ・ギヨー著『The Democracy Makers: Human Rights and the Politics of Global Order』(2005年)
- ティム・ワイナー著『Legacy of Ashes: The History of the CIA(CIA秘録)』(2007年)
- ハンス・モーゲンソー著『国際政治―権力と平和』
- チャーチ委員会最終報告書(1975-1976年)