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2026年2月20日 (金) 11:27時点における版
SWIFT
概要
SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication、国際銀行間通信協会)は、1973年にベルギーのラ・ユルプに設立された国際送金メッセージ・ネットワークである。200以上の国と地域から11,000以上の金融機関が参加し、一日あたり約4,000万件のメッセージを処理する。形式上はベルギー法に基づく協同組合であり、「中立的な国際組織」を標榜している。
しかし、その実態は根本的に異なる。SWIFTは、ドルを基軸通貨とする国際金融秩序の神経系統であり、アメリカが世界の金融取引を監視・統制するための戦略的インフラにほかならない。このネットワークから排除されることは国際金融システムからの追放を意味し、軍事攻撃に匹敵する経済的破壊力を持つ。
SWIFTの歴史を精査すれば、ドル覇権と経済収奪およびペトロダラーと超帝国主義の不可欠な構成要素としての姿が浮かび上がる。「中立」の建前の背後にある、帝国主義の金融的手段こそがSWIFTの本質である。
歴史的成立
テレックスからSWIFTへ
SWIFT以前、国際送金はテレックスに依存していた。メッセージ形式は標準化されておらず、各銀行が独自の書式で送金指示を送っていたため、誤読・誤送金が頻発した。通信速度は毎秒50ビット。一件の送金に数分を要する時代である。1960年代以降、国際貿易の急拡大に伴い、この旧来のシステムは限界に達した。
1973年5月、15カ国239行が共同でSWIFTを設立した。中心となったのはソシエテ・ジェネラル、ドイツ銀行、バークレイズなどヨーロッパの主要銀行である。本部をベルギーに置いたのは意図的な選択であった。冷戦下において、アメリカでもソ連でもない「中立国」に本部を置くことで、政治的中立性を演出したのである。
1977年に運用を開始。各金融機関に8桁または11桁のSWIFTコード(BICコード)を付与し、送金メッセージの形式を標準化した。この標準化こそがSWIFTの覇権の源泉である。世界の金融機関が同一のプロトコルで通信するということは、すべての国際金融取引が単一のネットワークを通過することを意味する。このネットワークを管理する者が、世界の金融取引を監視・統制する能力を持つ。技術標準の統一は、権力の集中と表裏一体なのである。
ネットワークの拡大
1980年代、参加資格は証券取引所、清算機関、資産運用会社にも拡大された。1990年代には旧ソ連圏が加盟し、SWIFTは事実上の世界標準となった。2000年代に入ると、コンプライアンス、制裁スクリーニング、マネーロンダリング対策のプラットフォームとしても機能するようになり、国際金融の規制インフラとしての性格を強めていく。
技術的アーキテクチャ
SWIFTが「代替不可能」とされる根拠は、その精緻な技術基盤にある。
SWIFTNetとデータセンター
通信基盤であるSWIFTNetは、公衆インターネットとは物理的に分離された閉域IPネットワークである。初期のX.25パケット交換プロトコル(1977年〜2001年)から、TCP/IPベースのSIPN(2001年〜)、さらにTLS 1.2以上の暗号化とREST APIを導入した現行アーキテクチャ(2017年〜)へと進化してきた。
物理的中枢は三カ所のオペレーティング・センター(OPC)である。アメリカ・バージニア州カルペパー、オランダ・ゾーテルメール、そして2009年に開設されたスイス・チューリッヒ近郊。すべてが同時稼働するアクティブ-アクティブ構成であり、公称可用性は99.999%。年間ダウンタイムは約5分以下に抑えられている。
注目すべきは、このアーキテクチャが地政学的に設計されている点である。二拠点時代にはすべてのメッセージがアメリカのサーバーを経由する可能性があった。スイスへのOPC追加はヨーロッパ域内メッセージの迂回措置とされるが、ドル建て取引はなおアメリカの管轄下を通過する構造が維持されている。
メッセージ標準とISO 20022移行
SWIFTのメッセージ体系は、1977年来のMTメッセージ(約200種類の独自規格)と、ISO 20022に基づくMXメッセージ(XML形式)の二系統で構成される。2022年3月から段階的にMXへの移行が進められ、完全移行は2025年11月に予定されている。
ISO 20022移行の技術的意義は明快である。データ構造の豊富化、UUID形式のエンドツーエンド追跡、XMLスキーマによるバリデーション。しかし、この「効率化」には重大な地政学的含意がある。MXメッセージでは送金人・受取人の詳細な個人情報・法人情報が構造化データとして伝送される。アメリカの諜報機関にとって、これはより高品質な情報源にほかならない。コンプライアンス・チェックの自動化とは、実質的にはアメリカの制裁リストに基づく取引遮断をリアルタイムで実行する技術的基盤の整備なのである。
技術的代替不可能性
SWIFTの代替が困難な理由は、技術力の問題ではない。11,000以上の金融機関が接続するネットワーク効果、50年近い運用で蓄積されたメッセージ標準、99.999%の可用性を裏付ける運用実績、PKI・HSMを含むセキュリティ基盤、そして世界中の金融エンジニアが蓄積したSWIFT固有の知識。これらが後発システムに対する構造的障壁を形成している。
ロシアのSPFSや中国のCIPSがSWIFTに遠く及ばないのは、この障壁ゆえである。SWIFTの代替を構築するには、技術開発と同時に、参加金融機関のネットワーク構築、標準の策定と普及、セキュリティ基盤の確立、そして既存エコシステムからの移行を可能にする政治的意志が必要となる。技術とは権力から独立した中立的なものではない。技術は権力構造そのものを体現する。
アメリカによる支配構造
テロリスト金融追跡プログラム(TFTP)
SWIFTに対するアメリカの支配を決定づけた転機は、2001年9月11日の同時多発テロである。テロ直後、ブッシュ政権は「テロリスト金融追跡プログラム」(TFTP)を極秘に開始した。
その内容は衝撃的であった。アメリカ財務省がSWIFTのデータベースに直接アクセスし、すべての国際送金メッセージを検索・分析する権限を獲得したのである。SWIFTは当初抵抗したが、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく大統領令を盾に協力を強制された。CIAとNSAもこのプログラムを通じてデータにアクセスしていた。約5年間、完全に秘密裏に運用された。
2006年6月、ニューヨーク・タイムズがTFTPの存在を暴露した。「中立的な国際組織」という建前は崩壊した。欧州議会は激しく反発し、批判決議を採択した。しかし、プログラムは停止されなかった。
TFTP協定:合法化された監視
暴露を受け、EUとアメリカの間でTFTPを「合法化」する交渉が始まった。2010年2月、欧州議会はリスボン条約で獲得した新たな権限を行使し、最初の協定案を否決した。EU閣僚理事会の決定を欧州議会が覆した史上初の事例である。
だが、アメリカの外交的圧力により再交渉が行われ、同年7月に修正協定が承認された。「保護措置」として、検索対象のテロ関連への限定、ユーロポールによる事前審査、最大5年のデータ保存期間が盛り込まれた。しかし後の監査で、ユーロポールの審査は形式的なものにとどまり、アメリカ財務省の要求がほぼ自動的に承認されていたことが明らかになった。「テロ関連」の定義は極めて広範であり、事実上、無制限のアクセス権が維持されている。
ドル決済とコルレス銀行制度
SWIFTに対するアメリカの支配力は、ドル決済の構造と不可分である。ドル建ての国際送金はすべて、ニューヨークの連邦準備銀行が管理するFedwireまたはCHIPSを経由して決済される。日本の銀行がブラジルの銀行にドル建てで送金する場合でも、その取引は物理的にニューヨークを通過する。
さらに、多くの国の銀行はドル建て取引のためにJPモルガン・チェースやシティバンクにコルレス口座を保有している。アメリカ政府がこれらの銀行に特定国との取引禁止を命じれば、対象国はドル決済システムから排除される。SWIFTのメッセージ・データとFedwireの決済データ。アメリカは世界の金融取引を二重に監視する能力を持っているのである。
法的管轄権の重層構造
SWIFTはベルギー法の下に設立されているが、アメリカの法的管轄権からは逃れられない。ドル決済がニューヨークの清算システムを経由する以上、OFACはすべてのドル取引について管轄権を主張する。アメリカの制裁法は域外適用の原則に基づき、アメリカ国外の機関にも及ぶ。SWIFTがアメリカの制裁に違反すれば、幹部が刑事訴追される可能性すらある。
ハンス・モーゲンソーが論じた「権力の複合性」の典型的事例といえる。法的権限、経済的権限、政治的権限を重層的に組み合わせることで、形式上は管轄外にある国際組織を実効的に支配する。これがアメリカの手法である。
SWIFTを用いた経済制裁
イラン:金融的封鎖の実験場
SWIFTが経済的兵器として初めて大規模に使用されたのは、イランに対する制裁においてである。2012年3月、EUの規制に基づき、イラン中央銀行を含む約30の金融機関がネットワークから切断された。SWIFTの歴史上、特定国の金融機関を一斉に排除した最初の事例であった。
効果は壊滅的であった。国際送金手段を失い、石油輸出の代金回収は極めて困難になった。通貨リアルは約40%下落し、インフレが加速した。2015年のイラン核合意で再接続されたが、2018年にトランプ大統領が核合意から一方的に離脱すると、再び切断された。EUは核合意の維持を支持していた。にもかかわらず、SWIFTはアメリカの圧力に屈した。「中立」の虚構がこれほど明白に露呈した事例はない。
ロシア:「金融核兵器」の発動
2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカ、EU、日本など主要国は共同でロシアの主要7行をSWIFTから排除した。「金融核兵器」と呼ばれたこの制裁の衝撃は甚大であった。ルーブルは急落し、外貨準備の約半分が凍結された。
注目すべきは、この制裁が完全ではなかった点である。ヨーロッパが天然ガス供給を維持する必要性から、エネルギー取引関連のロシアの銀行は当初除外された。SWIFT制裁は純粋な「制裁」ではない。発動する側の経済的利益も勘案された政治的決定にすぎない。
SWIFT排除の破壊力
SWIFT排除は現代の経済封鎖にほかならない。かつての海上封鎖が物理的な船舶の通行を遮断したように、SWIFT排除は金融の通行を遮断する。国際送金の遮断、貿易の崩壊、通貨の暴落、外貨準備の無力化。その影響は医薬品・食料の供給不足として一般市民の生活を直撃する。軍事的封鎖に匹敵する破壊力、それがSWIFT排除の実態である。
SWIFTと情報覇権
SWIFTのネットワークを通過するメッセージは、単なる送金指示ではない。送金者と受取人の名前・口座番号、取引金額、取引目的、関連する貿易書類。一件のメッセージが経済活動の詳細な記録である。このデータを分析すれば、各国の貿易パターン、企業間の取引関係、政府機関の資金の流れ、制裁回避の試み、そして特定国の経済的脆弱性まで把握できる。
ECHELONやPRISMが傍受する通信情報と同等か、それ以上の戦略的価値がここにある。通信傍受は会話の内容を明らかにするが、金融データの監視は行動の実態を明らかにする。「金の流れを追え」(Follow the money)。この古典的な諜報の原則に照らせば、SWIFTのデータは世界最大の諜報資源といえる。
エドワード・スノーデンが2013年に暴露した機密文書は、NSAがTFTPとは別の経路でSWIFTのネットワークに侵入していた事実を明らかにした。「合法的な」TFTPの枠組みの外でも、アメリカの諜報機関は独自にデータを収集していたのである。ファイブ・アイズの諜報同盟にとって、SWIFTは最も重要な金融情報源の一つにほかならない。「合法」と「違法」の区別は、アメリカの諜報活動においては意味を持たない。
「中立」の構造的不可能性
SWIFTの最高意思決定機関は理事会であり、理事はメッセージ送信量に比例して配分される。金融取引の規模がそのまま発言力に反映される構造。アメリカと西ヨーロッパの金融機関が過半数を占め、新興国・途上国の声は極めて限定的である。
さらに、G10中央銀行による「協調的オーバーサイト」が存在するが、このメンバーもG10のみ。200以上の国と地域の大多数は、SWIFTの運営に発言権を持たない。そしてこのオーバーサイトは、SWIFTの政治的利用を防止する機能を果たしていない。イランやロシアのSWIFT排除は、この枠組みの外で政治的決定として行われた。
SWIFTの「中立性」は、強大な権力を持つ者にとって都合の良い「中立」にすぎない。これは新自由主義が掲げる「自由で開かれた市場」の論理と同型である。形式的な平等の下で、実質的な権力の非対称性が温存される構造。法の支配が特定の覇権国の利益に奉仕する道具として機能するという保守ぺディアの基本的分析枠組みは、SWIFTの事例において最も明確に実証される。
代替システムの模索
ロシアのSPFS
ロシアは2014年のクリミア危機後、SPFS(金融メッセージ伝送システム)を開発した。ロシア中央銀行が運営し、2017年に正式運用を開始。2022年のSWIFT排除後に重要性が急増した。ベラルーシ、カザフスタンなど旧ソ連圏の金融機関も接続しているが、処理能力・標準化の程度ともにSWIFTには遠く及ばない。SWIFTの代替というよりは、ロシア圏における補完的システムとしての位置づけである。
中国のCIPS
中国は2015年にCIPS(人民元クロスボーダー決済システム)を稼働させた。SWIFTと直接競合するのではなく、SWIFTを迂回する設計思想に特徴がある。約100カ国1,400以上の金融機関が参加し、人民元建ての国際送金をドル決済システムを経由せずに処理する。ドル覇権と経済収奪の構造からの段階的離脱を目指す中国の戦略的布石にほかならない。
BRICSペイとCBDC
BRICS諸国は、各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を相互接続する分散型決済プラットフォーム「BRICSペイ」の構築を検討している。実現すれば、加盟国間の貿易決済はSWIFTとドル決済システムの双方を完全に迂回できる。ペトロダラーと超帝国主義で分析したマイケル・ハドソンの超帝国主義論の文脈で言えば、ドル体制の構造的支配に対する最も体系的な対抗構想である。
国際決済銀行(BIS)の「mBridge」プロジェクトも、中国、タイ、UAE、香港の中央銀行が参加し、SWIFTを介さない国際決済の技術的実現可能性を実証しつつある。CBDC時代の到来は、SWIFTの独占的地位を構造的に揺るがす可能性を秘めている。
リアリズムの観点からの分析
覇権安定論とSWIFT
覇権安定論によれば、国際的な制度やルールは覇権国の力によって創設・維持される。覇権国はこれらの制度を通じて国際秩序を安定させると同時に、自国の利益のために利用する。SWIFTはこの構造の典型である。国際送金を効率化する「公共財」の提供者でありながら、その管理権を通じてアメリカは他国の経済活動を監視・統制する能力を手に入れた。
ケネス・ウォルツの構造的リアリズムに従えば、一極体制における覇権国はあらゆる制度的手段を活用して自国の地位を維持する。SWIFTはNATO、IMF、世界銀行と並ぶ、アメリカ覇権の制度的支柱の一つにほかならない。
金融主権という概念
SWIFTの分析を通じて浮かび上がるのは、金融主権の重要性である。国家主権の構成要素として、軍事主権、憲法主権、情報主権と並び、自国の金融システムと国際決済を自ら管理する権利が存在する。SWIFTに依存する国は、この金融主権を事実上放棄している。自国の国際送金が外国のネットワークを通過し、そのデータが外国の諜報機関に監視される。アメリカの一方的決定により排除される可能性が常に存在する。これは民族自決権の経済的基盤に対する構造的脅威にほかならない。
アメリカが「ルールに基づく国際秩序」と呼ぶものの正体は、ルールを作り、解釈し、適用する権限がアメリカに独占されている秩序である。イスラエルの不法入植への資金の流れは制裁の対象とならず、同盟国に対する監視は問題とされない。これは国民国家の崩壊過程の金融的側面でもある。各国が独自の決済システムを持つ代わりにSWIFTに依存することで、民族自決権の経済的基盤が静かに掘り崩されているのだ。
日本とSWIFT
日本はSWIFTの主要利用国の一つだが、金融主権の観点からは深刻な脆弱性を抱えている。
第一に、日本の国際送金はほぼ全面的にSWIFTに依存している。ロシアにはSPFS、中国にはCIPSがある。日本には何もない。全銀システムは国内送金専用であり、国際送金には対応していない。SWIFTが遮断されれば、日本の国際貿易は即座に停止する。
第二に、日本のドル建て取引はアメリカの清算システムを経由するため、政府機関・企業・個人の国際送金はすべてアメリカの監視下にある。
第三に、日本はSWIFTに関する独立した政策決定能力を持たない。2022年のロシア制裁において、日本はアメリカの要請に従って参加した。独自判断で制裁に不参加とする選択肢は、事実上存在しなかった。これは偽日本国憲法の下で構造化された対米従属体制の金融的側面にほかならない。安全保障をアメリカに依存する国家が、アメリカの金融覇権に逆らうことは構造的に不可能である。
金融主権の回復には、独自の国際送金システムの構築、アジア地域決済ネットワークの創設、円建て国際決済の拡大、デジタル円の国際展開が必要となる。しかし、アメリカ軍が駐留し、外交・安全保障がアメリカに従属する限り、実現は極めて困難である。米軍撤退なくして金融主権の回復はあり得ない。反米保守が主張する対米自立は、憲法・軍事・外交にとどまらず、金融インフラの自主管理にまで及ばなければならない。独自の国際決済システムの構築は、産業政策の一環として国家戦略的に推進されるべきである。
結論
SWIFTは、20世紀後半の国際金融を効率化した技術的インフラであった。しかし、2001年の同時多発テロ以降、その性格は根本的に変質した。アメリカの金融覇権を支える戦略的資産であり、経済制裁の武器であり、世界の金融取引を監視する諜報インフラ、それが今日のSWIFTである。
道路や海運が軍事力によって支配されたように、金融の通信インフラもまたアメリカの覇権によって支配されている。ドル覇権と経済収奪が構造的な収奪メカニズムであるとすれば、SWIFTはその収奪を技術的に可能にする神経系統にほかならない。
日本の主権喪失は重層的である。偽日本国憲法による憲法主権の喪失、米軍駐留による軍事主権の喪失、ECHELON・PRISMによる情報主権の喪失、そしてSWIFT依存による金融主権の喪失。第四の理論が説く多極世界の実現は、各文明圏が独自の金融インフラを持つことなしには達成されない。すべての領域における独立の回復。金融主権はその中核をなすものである。
参考文献
- ハンス・モーゲンソー『国際政治:権力と平和』
- ケネス・ウォルツ『国際政治の理論』、1979年
- マイケル・ハドソン『超帝国主義国家アメリカの内幕』(Super Imperialism)、1972年
- ヘンリー・ファレル、アブラハム・ニューマン『地下帝国:相互依存の武器化と世界秩序の行方』(Underground Empire)、2023年
- ヘンリー・ファレル、アブラハム・ニューマン「Weaponized Interdependence: How Global Economic Networks Shape State Coercion」、International Security、2019年
- エドワード・スノーデン『永久記録』(Permanent Record)、2019年
- スーザン・ストレンジ『States and Markets』、1988年
- SWIFT公式年次報告書(各年)
- 欧州議会TFTP協定に関する決議文書(2010年)