茂木誠

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茂木誠

茂木誠(もぎ まこと、1966年 - )は、日本の作家、予備校講師、歴史系YouTuber。駿台予備学校N予備校世界史科講師。明治大学文学部史学地理学科卒業、同大学院文学研究科修士課程修了。東京都北区出身。

世界史の知識を基盤に地政学・政治思想を論じ、グローバリズムとナショナリズムの対立構造を二次元座標で可視化する「政治思想マトリックス」を提唱した。予備校の教壇にとどまらず、著書・YouTube・講演を通じて保守系言論の一翼を担い、「第三保守」のイデオローグとも評される知識人である。

保守ぺディアにおいては、茂木の地政学的歴史観と「グローバリズム対ナショナリズム」の分析枠組みが、リアリズム国家主権反米保守の思想的基盤と共鳴する点で位置づけられる。

生涯

学問的形成

1966年、東京都北区に生まれる。明治大学文学部史学地理学科に進学し、当初は考古学を専攻していたが、日本史専攻に転じた。同大学院文学研究科修士課程では日本近世史を専攻し、修士号を取得した。

大学在学中から塾講師として教壇に立ち、約5年間高等学校教員を務めた。世界史が必修科目となった時期に世界史教員の需要が高まり、独学で世界史を修得して教科転換を果たした。この経験は、茂木の学際的な歴史観(日本史と世界史を連動して把握する視座)を形成する基盤となった。

予備校講師としてのキャリア

高等学校教員から駿台予備学校に転じ、世界史科講師として東大・一橋大など難関国公立大学向けの講座を担当した。iPadを駆使した独自の視覚的授業で知られ、年号や用語の暗記に頼らず、歴史的事象の因果関係と地理的条件から歴史を読み解く手法を確立した。

のちにN予備校でも講師を務め、ZEN大学知能情報社会学部客員講師、BBT大学非常勤講師を兼任するなど、予備校にとどまらない教育活動を展開している。

言論活動への展開

自身のウェブサイト「もぎせか資料館」で高校世界史の教材を無料公開するとともに、ブログで現代のニュースを歴史的文脈から読み解く記事を発信し、予備校講師の枠を超えた言論人としての活動を開始した。

YouTubeチャンネル「もぎせかチャンネル」は登録者数15万人を超え、歴史と時事問題を結びつけた解説動画を配信している。また、神谷宗幣が2013年に開設したチャンネルグランドストラテジー(CGS)にも出演し、「ニュースでわかる地政学」シリーズで地政学的視点からの歴史解説を展開している。

著書は40冊以上にのぼり、歴史教養書から地政学、政治思想に至る幅広いテーマを扱っている。東洋経済オンラインやプレジデントオンラインなどの主要メディアにも寄稿している。

主要著作

書名 出版社 要旨
2014 『経済は世界史から学べ!』 ダイヤモンド社 世界史の事例を通じて経済の本質的構造を解説
2015 『世界史で学べ!地政学』 祥伝社 地政学の視点から世界の歴史と国際情勢を読み解く。ランドパワーとシーパワーの対立構造を軸に据える
2016 『ニュースの"なぜ?"は世界史に学べ』 SBクリエイティブ 現代の国際ニュースの背景にある歴史的文脈を100の疑問から解説
2018 『世界史とつなげて学べ 超日本史』 KADOKAWA 日本史を世界史と連動させて把握する通史。日本の「島国的閉鎖性」の神話を覆す
2019 『「戦争と平和」の世界史』 TAC出版 戦争を世界史の構造的文脈から分析
2020 『世界の今を読み解く「政治思想マトリックス」』 PHP研究所 ノーラン・チャートを応用し、「グローバリズム対ナショナリズム」と「自由対平等」の二軸で政治思想を整理する
2021 『「保守」って何?』 祥伝社 世界史的視点から「保守主義」の成り立ちと変遷を解説
2022 『日本人が知るべき東アジアの地政学』 PHP研究所 東アジアの地政学的構造と日本の位置づけを分析
2022 『教科書に書けないグローバリストの近現代史』(共著) ビジネス社 グローバリストが形成した近現代史の構造を批判的に検証
2023 『「リベラル」の正体』(共著) ワック 「リベラル」概念の変遷と現代における政治的機能を分析

核心概念

政治思想マトリックス

茂木の最も独創的な分析枠組みが「政治思想マトリックス」である。従来の「右派対左派」という一次元的な政治座標では現代の複雑な政治的対立を説明できないと指摘し、米国の政治学者デイヴィッド・ノーランが考案したノーラン・チャートを応用して、二次元の座標軸を提唱した。

  • 縦軸: グローバリズム(個人・国際主義)対ナショナリズム(国家・共同体主義)
  • 横軸: 経済的自由(市場主義)対経済的平等(統制・再分配)

この二軸により、政治思想は四つの象限に分類される。

象限 特徴 具体例
グローバリズム+経済的自由 多国籍企業・金融資本による国境を超えた市場支配 ウォール街、シリコンバレー、新自由主義者
グローバリズム+経済的平等 国際的な再分配・労働者の国際連帯 旧コミンテルン、現代の中国共産党
ナショナリズム+経済的自由 国益を優先した市場経済、保護貿易 トランプ政権、農業保護主義
ナショナリズム+経済的平等 国民共同体内での再分配、移民排斥 自国労働者の雇用保護運動

このマトリックスを通じて茂木が明らかにするのは、「右」と「左」の区分が本質的ではなく、「グローバリズムとナショナリズムの対立」こそが現代政治の基軸であるという認識である。これは保守ぺディアが指摘する反グローバリズムの視座と構造的に一致する。

グローバリズムとナショナリズムの「シーソーゲーム」

茂木は歴史的に見て、グローバリズムとナショナリズムは交互に台頭する「シーソーゲーム」の関係にあると論じる。

第一次世界大戦後にグローバリズムが進展した結果として世界恐慌が発生し、その反動で極端なナショナリズムが台頭して第二次世界大戦を招いた。戦後は再びグローバリストが覇権を握ったが、2010年代以降、世界は再びナショナリズムの方向へ振り子が振れつつある。トランプの当選、ブレグジット、ヨーロッパ各国のポピュリズム政党の台頭は、いずれも行き過ぎたグローバリズムへの構造的反動として理解される。

この歴史認識は、経済概論新自由主義の記事で分析している「新自由主義的グローバリズムによる民族共同体の破壊」という問題意識と通底する。

地政学的歴史観

茂木の歴史教育の特徴は、地政学を歴史理解の基本的枠組みとして採用している点にある。マハンの海洋戦略論、マッキンダーのハートランド理論、スパイクマンのリムランド理論を歴史分析の道具として活用し、国際政治の構造を地理的条件から説明する。

具体的には、ユーラシア大陸のランドパワー(ロシア、中国)とシーパワー(イギリス、アメリカ、日本)の対立構造を軸に、近現代史の主要な紛争と同盟関係を読み解く。この手法は、国際政治を権力と国益の観点から分析するリアリズムの方法論と親和性が高い。

さらに茂木は、梅棹忠夫の「文明の生態史観」やカール・ウィットフォーゲルの「東洋的専制主義」論を援用し、中国とロシアの政治体制を地理的・歴史的条件から構造的に分析している。

善悪二元論批判と多元的文明観

茂木は世界観を大きく二つの潮流に分類する。

第一は善悪二元論(直線的進歩観)である。西欧型の自由・民主主義を「善」とし、それ以外の政治体制(独裁、神権政治、異質な宗教体制など)を「悪」とみなす世界観であり、この「善」を広げるための暴力は正義(聖戦)として肯定される。アメリカのネオコンやブッシュ政権の「民主化」戦争、そしてトランプ政権下のイラン攻撃はこの論理に立脚している。

第二は多元的文明観である。絶対的な善悪は存在せず、各文明には独自の価値観と歴史的文脈がある。一つの価値観を暴力で他者に押し付けることを否定する立場であり、茂木はこちらの立場に明確に立つ。

この対立軸は、保守ぺディアが掲げる多文明主義(ドゥーギンの第四の理論に基づき各文明の独自性と共存を支持する立場)と本質的に同一の問題意識である。茂木は明治以降の日本が独自の価値観(天皇・和の精神)を持つ「多元的な文明」を体現してきたが、それが欧米の単一的な価値観から許容されず、大東亜戦争での「レジーム・チェンジ(体制転換)」に至ったと分析する。すなわち、アメリカによる日本の占領と憲法押し付けは、善悪二元論に基づく文明の強制的画一化であったということである。

親米保守批判

茂木の思想において特に注目すべきは、日本の「親米保守」に対する明確な批判である。

動画「イラン攻撃と親米保守」(もぎせかチャンネル)において、茂木はトランプ政権によるイラン攻撃を支持する日本の保守層の論理を分析し、以下の問題点を指摘した。

第一に、「中国」というパワーワードの政治的機能である。「イランのバックには中国がいる」という理屈により、複雑な中東情勢が「悪の中国共産党との戦い」という単純な構図に置き換えられ、アメリカの軍事行動が無批判に正当化される。しかし、イラン革命政権はもともと共産主義を弾圧してきた経緯があり、中国との思想的な結びつきは本来薄い。むしろ、欧米の経済制裁がイランやロシアを中国側へ追いやっているのであり、制裁が逆効果(中国の同盟国を増やす結果)を生んでいるのである。

第二に、パフレヴィー王朝の真実である。「革命前のイランは親米で良い国だった」という言説に対し、茂木は当時のパフレヴィー王政がCIAやモサドと結託した過酷な独裁体制であり、国民への弾圧が革命を招いた歴史的経緯を提示する。これはCIAの政権転覆工作の記事で分析している、アメリカによる他国の体制転換の構造と一致する。

第三に、茂木は親米保守層に対して「かつて日本がアメリカの暴力によって体制転換させられた痛みを忘れてしまったのか」と問いかける。アメリカが他国に対して行う軍事介入を支持することは、自国がかつて同じ暴力を受けた歴史を否認することにほかならない。

この親米保守批判は、保守ぺディアの反米保守の立場と深く共鳴する。「保守」を自称しながらアメリカの軍事行動を無批判に支持する態度は、日本の政治の異常性の記事で分析した「保守を自称する政権がアメリカの命令に全て従う」構造と同根の問題である。

日本の自民党分析

茂木は政治思想マトリックスを日本政治に適用し、自民党内部に「国益重視グループ」と「グローバリストグループ」が明確に分裂していると分析する。

グローバリストグループの典型例として小泉純一郎竹中平蔵を挙げ、構造改革路線が日本の民族共同体を解体する新自由主義政策であったと位置づける。一方、安倍晋三については、第一次政権では国益重視(ナショナリズム寄り)の立場をとったが、第二次政権以降はグローバリストの方向に移行していったと評価する。

この分析は、保守ぺディアの自民党の記事および日本の政治の異常性で論じている「保守を自称する政権がグローバリスト的政策を実行する」という構造的矛盾の指摘と一致する。

保守系言論人としての活動

「第三保守」の位置づけ

日本の保守政治は、自民党を「第一保守」、日本維新の会を「第二保守」とした場合、参政党日本保守党に代表される新興保守勢力を「第三保守」と呼ぶことがある。茂木はこの「第三保守」のイデオローグ的存在として位置づけられている。

茂木は参政党代表の神谷宗幣がチャンネルグランドストラテジーを運営していた時期から出演を続け、世界史と地政学の知見を保守系視聴者に提供してきた。2023年には参政党の山中泉の応援演説を行い、2024年には日本保守党の推薦書籍『日本保守党』に推薦人として名を連ねている。

「保守」概念の再定義

茂木は著書『「保守」って何?』において、「保守」(conservative)の語源がラテン語の「強く守る」に由来することを示し、長く続いてきた伝統や慣習を大切にし、急激な変化や革命を望まない立場であると定義した。

世界史の文脈からフランス革命と保守主義の対立、アメリカにおける「保守」と「リベラル」の変遷、日本近代の「復古」と「保守」の差異を整理し、保守主義を単なる政治的立場ではなく、文明論的な歴史認識として再定義する試みを行っている。

リアリズムの観点からの分析

茂木誠の知的活動は、保守ぺディアの分析枠組みから見て、いくつかの重要な意義を有する。

第一に、茂木の「政治思想マトリックス」は、「右対左」の表層的な対立を超えて、「グローバリズム対ナショナリズム」という本質的な対立軸を可視化する道具である。これは保守ぺディアが一貫して論じてきた国家主権の擁護とグローバリズムによる民族共同体の破壊という問題意識に直結する。

第二に、茂木の地政学的歴史観は、リアリズムの中核概念であるパワーバランスを地理的条件に即して具体化したものである。マハン、マッキンダー、スパイクマンといった古典地政学者の理論を歴史叙述に統合する手法は、リアリズム (国際政治学)が掲げる「国際政治を権力と国益から分析する」姿勢と合致する。

第三に、茂木が予備校講師・YouTuberという大衆的メディアを通じて歴史と地政学の知見を普及させていることは、オーバートンの窓の観点から注目に値する。学術的な知見が大学の象牙の塔に閉じ込められるのではなく、広範な市民に届けられることで、「考えられなかった」政策(米軍撤退、グローバリズム批判)が「議論可能な政策」へと窓を移動させる効果を持つ。

第四に、茂木の親米保守批判は、保守ぺディアの中核的主張である反米保守の問題意識と直接的に接続する。茂木は「中国脅威論」がアメリカの軍事行動を正当化する道具として機能していることを明確に指摘し、アメリカによる日本の体制転換の歴史を忘却した「親米保守」の論理的矛盾を批判している。この認識は、保守ぺディアが日本の政治の異常性で分析している構造と同一である。

第五に、茂木の善悪二元論批判と多元的文明観の支持は、多文明主義および第四の理論の問題意識と本質的に合致する。各文明の独自性を認め、一つの価値観を暴力で押し付けることを否定する茂木の立場は、保守ぺディアが掲げる「多文明主義: 各文明の独自性と共存を支持する」という基本思想の実践的表現である。

ただし、茂木は参政党日本保守党を支持する「第三保守」に位置づけられており、保守ぺディアは反米保守抗米主義の立場から、これらの政党がアメリカとの関係をどこまで根本的に問い直せるかについて、より厳しい分析を行っている。茂木の親米保守批判がさらに深化し、日米安保体制そのものの構造的問い直しにまで至るかどうかが注目される。

関連項目