生物学的侵略とリアリズム

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生物学的侵略とリアリズム

概要

ダーウィンモーゲンソー——この二人の思想家は、一度も会ったことがない。

一方は19世紀イギリスの博物学者であり、もう一方は20世紀ドイツ生まれの亡命政治学者である。ダーウィンはガラパゴスのフィンチを観察し、モーゲンソーはワイマール共和国の崩壊を目撃した。研究対象も時代も異なる。にもかかわらず、彼らは同じ真理を見ていた——この世界は、力と生存をめぐる終わりなき闘争の舞台である、という真理を。

ダーウィンの自然選択理論において、生物は限られた資源をめぐって競争し、最も適応した個体が生存し繁殖する。モーゲンソーの権力政治理論において、国家はアナーキーな国際体系の中で権力を追求し、自国の生存を確保する。「力」と「生存」——二人が別々に発見したこの二つの概念は、生物学と国際政治学を貫く共通の背骨である。

本記事は、この二つの知的伝統を統合する。侵入生物学の知見を国際政治学のリアリズムの枠組みに接合し、グローバリズムの本質を生物学的侵略の政治的形態として解明する。これは単なるアナロジーではない。人口侵略が生物学的に検証可能な現象であることを論証する、分析的枠組みの提示である。

リアリズムの基本原理と生物学の対応

ダーウィンとモーゲンソーの統合を試みる前に、それぞれの理論体系を簡潔に確認しておく。

古典的リアリズム——モーゲンソー

1948年、亡命先のアメリカでハンス・モーゲンソー(1904–1980)が『Politics Among Nations(国際政治)』を出版したとき、それはナチズムの台頭と二度の世界大戦を目撃した学者の、血の滲むような結論であった。モーゲンソーにとって、政治は力への意志(will to power)によって駆動され、国家は国益——究極的には生存——を権力の観点から追求する。理想主義は戦争を防げなかった。残るのはリアリズムだけである。

構造的リアリズム——ウォルツ

ケネス・ウォルツ(1924–2013)は『Theory of International Politics(国際政治の理論)』(1979年)において、国際政治の帰結を国際体系の構造——アナーキー(無政府状態)と国力の分布——によって説明した。ウォルツにとって、国家の行動は個々の指導者の意図ではなく、体系的な構造によって規定される。

攻撃的リアリズム——ミアシャイマー

ジョン・ミアシャイマーは『The Tragedy of Great Power Politics(大国政治の悲劇)』(2001年)において、大国は生存を確保するために地域覇権の確立を目指すと論じた。ミアシャイマーにとって、国際体系のアナーキーと不確実性は、大国にパワーの極大化を強いる。

リアリズムと侵入生物学の構造的対応

ここからが本記事の核心である。ダーウィンの生物学とモーゲンソーのリアリズムを並べて置いたとき、不気味なほどの対応関係が浮かび上がる。

リアリズムの命題 侵入生物学の対応する原理
アナーキー(国際体系に上位の権威がない) 自然界には種間関係を調停する上位の権威がない
自助(国家は自力で生存を確保しなければならない) 各種・各集団は自力で生存と繁殖を確保しなければならない(自然選択)
パワーの極大化(生存のために力を蓄積する) 適応度の極大化(生存と繁殖の成功を最大化する)
安全保障のジレンマ(一方の安全が他方の脅威となる) 競争排除則(同一ニッチの二種は共存できない)
勢力均衡(パワーの均衡が安定をもたらす) 生態系の均衡(種間の競争均衡が生態系の安定をもたらす)
同盟と対抗(脅威に対して同盟を形成する) 共進化(捕食者と被捕食者の軍拡競争)
領土の防衛(主権と領土の一体性を維持する) 縄張り行動(資源と繁殖圏を防衛する)

この対応は偶然ではない。リアリズムも進化生物学も、希少な資源をめぐる競争的行為者の相互作用を分析する理論体系であり、同一の構造的論理に従っている。

生物学的侵略としてのグローバリズム

理論の対応関係を確認した。ここからは、その対応関係が現実の政策においていかに具体化されているかを検証する。アメリカ主導のグローバリズムが推進する政策群は、侵入生物学が記述する生物学的侵入の各段階に——偶然とは思えないほど——正確に対応している。

構造改革=生態系の撹乱

新自由主義的構造改革——労働市場の柔軟化、終身雇用の破壊、非正規雇用の拡大、公共サービスの縮小——は、生態系の撹乱に相当する。侵入生物学の確立された知見によれば、撹乱された生態系は外来種の侵入に対して最も脆弱である。在来種のネットワークが破壊され、空いたニッチに外来種が侵入しやすくなるからである。

構造改革は日本社会という「生態系」を意図的に撹乱し、外来集団が侵入・定着しやすい環境を作り出した。

国境管理の緩和=障壁の除去

侵入生物学において、外来種の侵入を阻止する最も効果的な手段は障壁(barrier)の維持である。地理的障壁、制度的障壁、文化的障壁が外来種の侵入を阻止する。

「出入国管理の緩和」「技能実習制度の拡大」「特定技能ビザの創設」は、これらの障壁を制度的に除去する行為にほかならない。

少子化の誘発=在来集団のアリー効果

構造改革による経済的圧迫は、在来集団の出生率を低下させ、アリー効果を誘発する。日本の合計特殊出生率は1.20(2024年)にまで低下し、年間約90万人の自然減が継続している。

低賃金移民政策=外来集団の導入

低賃金移民政策は、外来集団を在来集団の生態的ニッチ——労働市場、住宅市場、社会保障——に直接導入する政策である。これは侵入生物学において、外来種を在来種のニッチに人為的に導入するのと同一の構造を持つ。

多文化主義=侵入の正当化イデオロギー

「多文化共生」「多様性」「インクルージョン」といったイデオロギーは、侵入に対する心理的・文化的障壁を除去する機能を果たしている。在来集団が自らのニッチを防衛しようとする試みを「排外主義」「レイシズム」として非難することで、侵入に対する抵抗を無力化する。

日本における生物学的侵略の実例

ここまでの議論が抽象的に感じられるならば、日本の足元を見てほしい。アメリカからの侵略者は、すでに日本中の川と湖にいる。日本列島においては、アメリカ起源の外来種による在来種の駆逐が、移民政策による人口侵略の構造と驚くほどの正確さで一致している。

アメリカザリガニとニホンザリガニ

1927年、わずか数十匹のザリガニが神奈川県に持ち込まれた。食用ウシガエルの餌として輸入されたアメリカザリガニProcambarus clarkii)——たった数十匹である。それから100年足らず。今や日本全国の水路、田んぼ、池にアメリカザリガニが生息し、在来のニホンザリガニCambaroides japonicus)は北海道と東北の一部にしか残されていない絶滅危惧種である。

数十匹が、数千万を駆逐した。初期の導入量がいかに小さくとも、繁殖力と適応力のある外来種は在来種を不可逆的に圧倒する——これがアメリカザリガニの教訓である。

オオクチバスと琵琶湖の生態系

400万年。琵琶湖が世界有数の古代湖として固有種を育んできた歳月である。60種以上の固有種——これは、400万年の進化が琵琶湖という「島」に刻んだ生物学的遺産である。

アメリカ原産のオオクチバスMicropterus salmoides)は1925年に、ブルーギルLepomis macrochirus)は1960年にそれぞれ日本に導入された。特に琵琶湖では、これらアメリカ原産の魚種が在来の固有種を含む淡水魚類に壊滅的な打撃を与えた。ホンモロコ、ニゴロブナ、ビワマスなどの固有種が深刻な影響を受けている。400万年の進化を、数十年のアメリカからの侵入者が破壊しつつある。

グアムのミナミオオガシラ

グアム島では、第二次世界大戦後にアメリカ軍の物資とともにミナミオオガシラBoiga irregularis)が侵入し、在来鳥類12種中10種を絶滅に追いやった。アメリカ軍の駐留が、文字通り在来種の絶滅をもたらした事例である。

アライグマの野生化

北米原産のアライグマProcyon lotor)は、ペットとして日本に導入された後に野生化し、全47都道府県で確認されている。農業被害に加え、在来種であるニホンタヌキとの競合、文化財への被害が深刻化している。

マングース

「害獣を退治するために外来種を導入しよう」——この発想がどれほど破滅的な結果をもたらすか、沖縄は身をもって証明した。フイリマングースは、ハブの駆除を目的として1910年に沖縄に、1979年に奄美大島に導入された。しかし、ハブの駆除には効果がなく、代わりにヤンバルクイナアマミノクロウサギなど固有の絶滅危惧種を捕食し、壊滅的な被害をもたらした。「問題を解決するために外来者を招く」という発想は、生態系でも社会でも、同じ帰結を生む。

ヒアリ

南米原産のヒアリSolenopsis invicta)は、2017年に日本で初めて確認された。ヒアリは強力な毒針を持ち、アメリカでは年間数十億ドルの被害をもたらしている。日本では水際での防除が続けられているが、一度定着すれば根絶は事実上不可能であるとされている。

生物学的侵略と人口侵略の構造的同一性

上記の生物学的侵略と、アメリカが推進する移民政策による人口侵略は、生物学的に同一の構造を持つ。

侵入生物学の段階 生物学的侵略(外来種) 人口侵略(移民政策)
1. 人為的導入 アメリカザリガニが食用ウシガエルの餌として導入 低賃金移民政策により外国人労働者が導入
2. ニッチ競合 アメリカザリガニとニホンザリガニが同一ニッチで競合 移民と先住集団が労働市場・住宅市場で競合
3. 数的圧倒 繁殖力の高い外来種が在来種を数的に圧倒 人口学的浸食——高出生率の移民集団が在来集団を数的に圧倒
4. 遺伝的希釈 交雑による在来集団の遺伝的固有性の消滅 混血化による遺伝的浸食
5. 不可逆的変容 在来種は回復不能 人口構成の変容は不可逆的

異なるのは、外来種の侵入が多くの場合意図せざる結果であるのに対し、移民政策は意図的に推進されているという点である。アメリカザリガニの導入は予見不可能な結果をもたらしたが、アメリカの移民強制は覇権国の政策として計画的に遂行されている。意図せざる侵入でさえ在来種を壊滅させるのであれば、意図的な侵入がもたらす結果は推して知るべきである。

帝国主義の生物学

外来種による生物学的侵略と、帝国主義による人口侵略が構造的に同一であるならば、歴史上の帝国主義は生態学の言葉で記述できるはずである。実際、それを試みた歴史家がいる。

生態学的帝国主義——クロスビーの分析

歴史家アルフレッド・クロスビーは、1986年の著書『Ecological Imperialism: The Biological Expansion of Europe(生態学的帝国主義: ヨーロッパの生物学的膨張)』において、一つの不都合な真実を暴いた——ヨーロッパの植民地化が単なる軍事的征服ではなく、生態学的な侵略であったという事実である。銃弾よりも病原菌が、兵士よりも雑草が、帝国を拡大した。

クロスビーは「ネオ・ヨーロッパ」——オーストラリア、ニュージーランド、北米、南米南部——の形成過程を分析し、ヨーロッパの植民者が持ち込んだ動植物・病原体が在来の生態系を根本的に変容させたことを示した。

  • 病原体の侵入: 天然痘、麻疹、インフルエンザなどの旧世界の病原体が、免疫を持たない新世界の先住民集団を壊滅させた。アメリカ先住民の推定90%以上がヨーロッパの病原体によって死亡した
  • 動物の侵入: 馬、牛、豚、羊、ヤギなどの家畜が在来の生態系を変容させた
  • 植物の侵入: ヨーロッパの雑草が在来の植生を駆逐した

クロスビーの分析は、帝国主義が本質的に生物学的侵略の政治的形態であることを明らかにした。

現代の生態学的帝国主義

クロスビーが分析したのは過去の帝国主義である。では現在はどうか。アメリカによる現代の帝国主義は、16世紀のスペインのような直接的な軍事征服と病原体の散布ではなく、制度的メカニズムを通じた間接的な生物学的侵略として遂行されている。手段は洗練されたが、構造は同じである。

  • 構造改革新自由主義): 在来の社会的生態系を撹乱する
  • 国境管理の緩和: 侵入の障壁を除去する
  • 少子化の誘発: 在来集団のアリー効果を引き起こす
  • 移民政策: 外来集団を導入する
  • 多文化主義イデオロギー: 侵入に対する抵抗を無力化する

スペイン帝国が天然痘を持ち込んだのは意図的ではなかったが、アメリカ帝国が構造改革と移民政策を推進するのは完全に意図的である。

島嶼国家の防衛戦略

ニュージーランドの空港に降り立つと、入国審査の前にバイオセキュリティの検問がある。リンゴ一個、泥のついた靴一足が没収の対象になる。島嶼生態系の脆弱性を知り尽くした国家の、当然の対応である。日本もまた島嶼国家である。同じ論理が適用されなければならない。

島嶼集団の脆弱性の記事で論じた通り、島嶼の固有種を守るための最も有効な手段は、外来種の侵入を未然に防ぐことである。一度侵入が定着すれば、根絶は極めて困難となる。この予防原則を、島国・日本の政策に適用すれば、以下の防衛戦略が導かれる。

  • 国境管理の維持・強化: 侵入の第一段階(輸送・導入)を阻止する。ニュージーランドの厳格な生物学的国境管理に倣い、人口の大規模な流入を制限する
  • 構造改革の停止・逆転: 生態系の撹乱を止め、在来集団の回復力(レジリエンス)を高める。終身雇用の復元、非正規雇用の制限、公共サービスの充実
  • 出生率の回復: アリー効果の進行を食い止め、在来集団の個体数を回復させる。これは移民によってではなく、在来集団自身の繁殖によってのみ達成されるべきである
  • スマートシュリンクの実施: 人口減少を移民ではなく社会構造の比例的縮小で対応し、外来集団の導入の口実を排除する
  • 産業政策の復活: 在来の産業エコシステムを強化し、外来集団に依存しない経済構造を構築する

文明の衝突と生態系の衝突

ダーウィンとモーゲンソーの統合は、さらにもう一人の思想家の仕事を照射する。

ハンチントンの文明論の生物学的再解釈

1996年、サミュエル・ハンチントンは『The Clash of Civilizations(文明の衝突)』を出版し、冷戦後の世界秩序は文明間の衝突によって規定されると論じた。この予言は嘲笑された。しかし2001年9月11日以降、誰も笑わなくなった。ハンチントンは世界を8つの文明圏に分類し、文明間の「断層線」(fault line)が紛争の最も危険な場所であると主張した。

ハンチントンの文明論を侵入生物学の枠組みで再解釈すれば、以下の対応が見えてくる。

  • 文明圏=生態系: 各文明圏は独自の「種」(民族、文化、制度)で構成される固有の生態系である
  • 文明間の境界=生態系の境界: 文明間の断層線は、異なる生態系を隔てる障壁に相当する
  • 移民=生態系間の遺伝子流動: 大規模な移民は、異なる生態系間の障壁を突破する遺伝子流動に相当する
  • グローバリズム=生態系の障壁の除去: グローバリズムは、文明間の障壁を体系的に除去し、すべての生態系を統合しようとする試み

ドゥーギンの多極世界と生物多様性

ここに、一つの逆説がある。「多様性」を叫ぶグローバリストこそが、真の多様性を破壊している。

アレクサンドル・ドゥーギン第四の理論は、リベラリズム(アメリカ覇権)に対抗して、各文明の固有性と自律性を擁護する多極世界を提唱する。

生物学的に言えば、ドゥーギンの多極世界は生物多様性の維持に相当する。各文明(生態系)が独自の固有種を維持し、障壁(国境、文明間の境界)によって保護されている状態こそが、「文明的多様性」の最大化を実現する。

対照的に、アメリカ主導のグローバリズムは生態系の均質化——すべての文明をリベラル民主主義という単一の生態系に統合する試み——であり、これは生物多様性の壊滅をもたらす。自然界において生態系の均質化が種の多様性を破壊するように、文明の均質化は文化的・民族的多様性を破壊する。

結論——民族自決権の生物学的基盤

ダーウィンとモーゲンソー。クロスビーとハンチントン。ドゥーギンとエルトン。本記事が統合してきたこれらの知的伝統は、一つの根本的な結論へと収斂する。

民族自決権は、通常、政治的・法的権利として理解されている。しかし、本記事の分析が示す通り、民族自決権は生物学的な自己保存の権利という、より根源的な基盤を持つ。

  • 遺伝子プールの保全は自己保存の核心である: 民族の固有性は、数千年にわたる地理的隔離と自然選択によって形成された遺伝子プールに基礎を置く。この遺伝子プールが希釈され消滅すれば、民族は生物学的に消滅する。これは遺伝的浸食の記事で詳述した通りである
  • 国境は遺伝子プールの壁である: 混血化の構造的不可避性の記事で論じた通り、国境は自然界の地理的障壁と同じ機能——遺伝子流動を制限し、集団間の遺伝的分化を維持する障壁——を果たしている
  • 国境の管理は遺伝子プールの管理と等価である: 国境を開放する政策は、山脈を削り取って二つの生態系を接続するのと同じことであり、その帰結は在来集団の遺伝的固有性の消滅である
  • 移民制限は生態学的な予防原則の適用である: 生物学的侵入の不可逆性が教える通り、侵入を予防することは、侵入後に対応することよりも格段に効果的かつ低コストである

民族自決権とは、畢竟、遺伝子プールの自己決定権にほかならない。各民族がその固有の遺伝子プールを維持し、外部からの希釈を拒否する権利——これは、島嶼の固有種が外来種の侵入から保護される権利と、生物学的に同一の構造を持つ。

スマートシュリンクは、この権利を政策レベルで具現化したものであり、侵入生物学とリアリズムの双方が支持する、日本の生存戦略にほかならない。

参考文献

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